この研究の目的は、社会システム論アプローチの一つとして位置づけられる農村の地権者・耕作者結合から水田農業の構造変化を明らかにすることである。この方法は、創案者の西尾敏男氏によって「耕脈」と呼ばれている。われわれの主要な調査地域は佐賀県東脊振村石動と山形県八幡町大島田である。個人面談を使っての1980年代と2010年代の耕脈間の比較分析の結果は、社会的関係から経済的関係への穏やかな変化を示している。この事実は、水田農業は経済的要因のみならず人間的要因によっても関係づけられるというわれわれの仮説を勇気づけている。
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