研究課題/領域番号 |
24658196
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
飯國 芳明 高知大学, 教育研究部総合科学系, 教授 (40184337)
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研究分担者 |
大田 伊久雄 愛媛大学, 農学部, 教授 (00252495)
緒方 賢一 高知大学, 教育研究部人文社会科学系, 准教授 (00380296)
吉尾 寛 高知大学, 教育研究部人文社会科学系, 教授 (40158390)
玉里 恵美子 高知大学, 総合教育センター, 准教授 (40268165)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | モンスーン・アジア / 所有権 / 形骸化 / 国際研究交流 / 韓国 / 台湾 |
研究概要 |
モンスーン・アジアの先進経済圏(日韓台)に焦点をあて、その地域での現地調査を実施するとともに、台湾からは研究者を招聘して比較研究を行った. まず台湾については、国立嘉義大学、行政院農業委員会、林業試験所、林務局羅東林区管理処、国立台東大学等で、同国における森林管理の現状と土地管理放棄の現状について資料収集と聞き取り調査を行った(2013年1月).また、国立台湾嘉義大学の李俊彦教授を高知大学及び愛媛大学に招聘して、森林管理に関する共同調査を実施した(2013年2月). 韓国については、群山大学の厳基郁教授と保寧市、群山市における山間地域の視察及び福祉関係施設のヒアリング調査を実施した(2013年2月).日本では、権利形骸化の内実を法的な角度から具体的に検討するため、農地法の適用状況について、青森県弘前市および高知県佐川町において、現地調査を実施した.両地域とも、遊休化した農地に対して、農地法32条に基づく通知を発出している.さらに弘前市は全国で初めて34条に基づく勧告を出した.両市町の調査によって空洞化した権利内実の回復をどのようにしていくか、両市町とも模索を続けている実態が明らかになった. 台湾の史的な分析については、同国の土地制度の歴史的な前提を考える上で、明治・日本が日清戦争の後直面した清朝統治下の土地制度の特徴は抜くことができないことを念頭に置いて、ほぼ同時期(19世紀後半)の中国大陸(河南省)における土地税の形態を、「抗糧」運動(地方官による土地税徴収に土地所有者等が抵抗する運動)に即して考察した.その結果、土地税(「税」)の徴収過程においては、地方政府が様々な付加税(「費」:治安維持費・治水費用等として徴収)を合法的にほぼ任意に設けられる実態が確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初より計画していた韓国、台湾における実態調査及び国内の調査についてもほぼ計画通りに実施して成果を得た.すなわち、韓国、台湾については、経済学・社会学の観点から条件不利地域の実態調査を実施し、国内の調査についても高知県及び青森県において詳細な法学的検討を行った.また、歴史学の分野では台湾の所有体系について清との比較を通じてその特徴を明らかにできた.
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今後の研究の推進方策 |
日韓台の3つの経済圏において所有権の形骸化の過程を整理して、所有権の形骸化の過程の共通性と異質性を検討する.また、モンスーン・アジアの他地域を含めて、この問題をどのように整理すべきかを検討するための枠組みづくりを試みるとともに、法学的な観点から、所有者の責任に関する適切な制度設計の骨格を提示して、新しい制度に繋がる分析視角を検討する予定である. また、本年度の海外調査の計画は以下の通りである.まず、韓国の大学や研究機関を訪問して、所有権の現状を調査する.また、農村地域における高齢化および家族変動についても現地調査を再度行うとともに、データ分析を行う.さらには、両者を比較検討しながら、農地の流動性についても検討を深める. 台湾では森と海に関する所有権の形骸化問題の実態を現地調査する予定である.森林については、公有林、森林組合ならびに地方行政組織を中心に森林管理の現状把握と問題点の抽出を行い、わが国における中山間地域(特に高知県および愛媛県内の限界集落)の現状との比較検討を行う計画である. 台湾の史的な分析においては、初年度の考察(清朝下の「税・費」設定)結果をふまえて、日治時代における土地所有制度の特徴を、土地税体系を通して検討する。敢えて仮説的な言い方をするならば、とくに、土地空間と(土地)所有者空間に跨がって、いかに「税・費」が設定されたか否かを明らかにし、土地税負担者の観点から、現在の「土地所有権の形骸化」の契機ならびに課題の特質の解明への手がかりを得たい. 国内の調査は、権利内実の空洞化の実態を調査し、有効な対策について法学的・社会学的な観点から検討する.農地についてのみならず、都市の宅地、あるいは林地について調査を実施する予定である.また、国内に限らず東アジア地域の実情についても調査し、より広い視野から問題を捉え直し、法制度を超えて進行する事態への対応策を探る.
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次年度の研究費の使用計画 |
繰越分は、昨年度予定していた海外調査からの研究者の招聘ができなかったために生じた.今年度は、この予算を今年度予算と合わせて、台湾及び韓国における所有権の形骸化の実態調査を体系的に行うための費用とする.
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