土壌に存在する酵素にはさまざまなものがあり、それらは、酵素反応によって、物質を変化させ、土壌を土壌たらしめる。土壌酵素活性は、土壌の活力や生産性の指標となる。他方で、近年、土壌酵素活性測定に関して、疑問が投げかけられた。すなわち、土壌を採取して、緩衝液などに懸濁し、基質を与え、酵素反応による生成物を定量するといった方法では、実際にその基質が土壌中で酵素による作用を受ける環境とはかけ離れている。土壌中に酵素が存在する条件を破壊せず、その活性を測定することができれば、現実の土壌における酵素反応に即した土壌酵素活性の評価が可能となる。まず、水か緩衝液に混合したブドウ糖とブドウ糖が酵素によって酸化されたさいの電子受容体となるテトラゾリウム塩を土壌に与え、反応後に土壌を回収し、テトラゾリウム還元物(フォルマザン)を定量する方法を試みた。ところが、この方法では、数日後にバジルなどの幼植物が枯死した。幼植物の葉脈に、赤い発色が観察され、水に不溶のフォルマザンが沈着していることがわかった。この方法は生成するフォルマザンの毒性が問題となるのみならず、緩衝液を利用しても酵素活性の検出が困難であった。そこで、木材を利用したリグノセルロース分解能を利用することにした。栃木県の畑地土壌に異なる量の水を加え、1)水没、2)飽和、および3)飽和から乾燥への移行をたどった各土壌カラムを用意した。これに木材を差し込み、26℃の暗所で15日間培養後に回収した。木材を乾燥後、その曲げ強度を測定した。その結果、これら土壌水分処理の違いがリグノセルロース分解の有意な変動要因であることがわかった。飽和から乾燥に至った処理区でリグノセルロース分解がもっとも進行した。水没と飽和の処理区間に差はなかった。木材の曲げ強度低下を利用したリグノセルロース分解能の現位置測定は、土壌環境の違いを反映することがわかった。
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