研究課題/領域番号 |
24658206
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研究機関 | 学習院女子大学 |
研究代表者 |
荘林 幹太郎 学習院女子大学, 国際文化交流学部, 教授 (10460122)
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キーワード | 集合的資源管理 / 農用地利用改善団体 / 利用権集積 / 土地改良事業 / 農地中間管理機構 |
研究概要 |
前年度にその存在を確認した滋賀県彦根市のS集落における土地所有者による農地利用改善組合が、担い手農家への利用権の連担化再配分を一気に成し遂げた事例についての分析を進めた。まず、同集落の関係者への詳細ヒアリングを実施するとともに、滋賀県農政水産部、農地法の専門家、コモンズ論の専門家を交えてのワークショップを実施した。本集落がこのようなアレンジを構築できた特殊要因の詳細を明確にするとともに、このモデルを普及するための方法論等について議論を行った。また、農地中間管理機構の枠組みにおいてS集落モデルが果たすべき役割についても概念的な分析を行った。なお、このようなアレンジを確立したことが確認できたのは滋賀県内にある約1600の集落のうち、本集落を含めて2集落のみであった。なお、S集落の制度的枠組みの革新性とその意義については、2014年2月に刊行した「農業直接支払いの概念と政策設計」(農林統計協会)に予備的にまとめた。 つぎに、経営農地の連担化について実務的に深い知見を有する3機関(全国農協中央会、全国農業会議所、全国農地保有合理化協会)における農地利用集積関連事業の専門家にヒアリングを行い、上記のS集落モデルの他府県での有無について聞き取りを行った。その結果、このようなアレンジが統計データに示されるものではないことからより広いアンケート調査を行う必要があるものの、3専門家の共通の認識としては全国的にも稀有な事例とのことで一致した。これらのヒアリングをもとに、各都道府県中央会および関東農政局管内の県、市町村の一部に対してS集落モデルの有無についてのアンケート調査を実施することとした。 さらに、2013年6月の国際コモンズ学会世界大会(北富士において開催)の場を活用して、本事例を含む共同行為のコモンズ論の視点からの重要性についてIFPRIの海外研究協力者と議論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に本研究の分析枠組みの観点から中核的事例となる集落を発見し、平成25年度にはその詳細分析を継続するとともに専門家等による現地ワークショップも実施した。また利用権の連担化に関する制度的枠組みの観点から全国的に見ても貴重な事例であることを確認した。さらに、25年度に明らかになった国による農地中間管理機構の取り組みは、本研究の成果と密接に関係することから、その関係性についての分析を実施した。あわせて、滋賀県内外での類似事例の発掘を積極的に進めた。後述するとおり、類似事例が想定したよりもはるかに少ないことが平成25年度調査で明らかになったことから、その調査に予定していた研究費については次年度に回すこととするが、コモンズ論の観点から土地所有者の一体的行為を分析しようとする本研究の革新性を踏まえれば、研究自体の進捗としては概ね順調と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
S集落モデルと類似のモデルについて全国的なレベルでの確認調査を実施するとともに、(おそらく数としては多くないと現時点では想定されるが)類似モデルの比較分析を詳細に行うことにより、所有の一体化を集落レベルで一体化するためのルールメイキングのあり方について制度論的分析を行う。その結果を踏まえて、土地所有者の一体的行動による利用権の連担化や新たな農村振興の観点からの土地利用調整を実現するための具体的な政策枠組みを提案する。
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次年度の研究費の使用計画 |
S集落と類似の事例を滋賀県内で50選定してそれについて制度的な枠組みについて調査を実施する予定にしていたが、類似集落がほとんど県内には存在しないことが確認されたため、それに予定していた調査費用(謝金および国内旅費)を中心として本年度に回すこととした。 最終年度である本年度については、S集落の類似事例(滋賀県内で1地区、県外で現時点では10地区程度を確認)について詳細な比較調査を行うこととする。当初予定よりも分析地区数が減じたことから、その分析内容をより高度にする。具体的には、予定している土地所有者による一体的ルールメイキングの経緯や実態分析に加えて、それに影響を与える因子分析を詳細に実施する。因子としては、コミュニティのソーシャルキャピタルの程度、農業構造、人口構成、支援政策の有無などを予定する。それらを含めたデータ収集およびデータ解析に関する謝金に本年度使用予定の直接経費約216万円のなかから120万円、国内旅費に70万円(研究協力者分を含む)を充当する。さらに、研究成果を踏まえた政策インプリケーションを議論するための、農政担当者、農地利用集積機関担当者、コモンズ研究者等によるワークショップ開催に26万円(報告書の印刷を含む)を充当する。
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