研究課題/領域番号 |
24658207
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研究機関 | 帯広畜産大学 |
研究代表者 |
武田 一夫 帯広畜産大学, 畜産学部, 教授 (80374768)
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研究分担者 |
松嶋 卯月 岩手大学, 農学部, 准教授 (70315464)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | シモバシラ / シソ科植物 / 氷晶析出 / 氷核活性 / 植物外凍結 / 寒さ適応性 / 3次元画像解析 / 高尾山 |
研究概要 |
シソ科植物「シモバシラ(Keisukea japonica, Miq.)」が氷晶析出現象をどのように起こすかという命題に対して、氷晶析出機構と吸水機構の解明を目的に、氷核活性機能、氷晶析出と茎の構造、通水経路について室内実験を行った。この内、氷核活性機能は、東京都・高尾山と陣馬山で採取した植物を用いて、組織の発生部位、活性温度、季節変動を室内実験で調べた。その結果、木部より皮層で活性が高く、活性機能が季節変動して夏期から初冬の氷晶析出直前に向けて高まり、多くの試料で活性温度が-2.1~-2.5℃になることが判明した。氷晶析出機構は、室内凍結試験から根系を除去した茎のみでも氷晶が析出したことから、茎の構造が析出をもたらすことが示された。電子顕微鏡写真で茎の構造を観察したところ、木部表面に1μm大のピット(壁孔)が見つかった。また、蛍光色素溶液を吸収させた茎の3次元蛍光画像解析から、茎内部の給水は、木部の導管を経由して起こることが確認された。以上の結果を踏まえて、気温が-2~-3℃に低下したとき、木部表面にある水は氷核活性機能によって過冷却が破れて凍結し、ピットによって氷晶の木部内部への侵入が阻止され、氷成長面で駆動力が発生すると思われる。この駆動力によって土壌水は根系から導管を経て木部表面に供給されて、連続した氷晶が析出すると考えられる。本年度は氷晶析出機構と吸水機構の概要を理解するに至ったが、いくつかの実験で再現性の確認が残っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
氷晶析出機構について、野外観測や室内試験から、剥れた皮層の下にある木部表面の過冷却水の凍結がキッカケで起こる。このキッカケをつくる、氷核活性機能のあることが当初の予定どおり観測・実験から明らかになった。これについては、再現性確認の実験が必要である。また、氷晶析出機構は、植物で起こる物理現象として、その機構を室内凍結試験と電子顕微鏡写真の観察から調べた。さらに、析出時の茎内部の通水路を、蛍光色素を用いた3次元画像解析を行った。平成24年度に得られた研究結果から、氷核活性機能と氷晶析出機構の一部成果を、国際シンポジウム1件、国内学会で2件の研究発表を行った。国内学会の1件が雪氷研究大会(共催:(社)日本雪氷学会、日本雪工学会)で優秀発表賞を受賞した。研究成果は、邦文雑誌と英文ジャ-ナルへ執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、シモバシラから氷晶析出がどのように起こるかという命題に対して、現地調査と室内実験を中心に行ってきた。今後は、この植物にどのようなメリットがあってなぜ氷晶析出を起こすのか、についての研究課題が残されている。植物の寒さ適応性の分野では、細胞外凍結、器官外凍結は研究が行われてきたが、シモバシラのような植物外凍結はこれまで本格的な研究が行われてこなかった。また、氷晶析出はシモバシラ以外の多くの植物でも起こることから、植物の一般的な性質と考えられる。植物外凍結として、植物の氷晶析出を一般化することは、未知の学問分野を埋める研究として意義深い。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし。
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