研究課題/領域番号 |
24658208
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
牧野 義雄 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (70376565)
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研究分担者 |
秋廣 高志 島根大学, 生物資源科学部, 助教 (40508941)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 疎水性水和 / 野菜 / 機能性物質 |
研究概要 |
ブロッコリーを試料として、スルフォラファン抽出及び分析法を検討した。ブロッコリー花蕾部を粉砕した後、ジクロロメタンで疎水性物質を抽出した。ロータリーエバポレーターで蒸発乾固した後、アセトニトリルで再び溶解した。最後に遠心分離した後、メンブランフィルターで濾過して、分析用試料とした。高速液体クロマトグラフ-質量分析計(LC-MS)で分析した結果を過去の文献値と比較したところ、同水準であることが確認できたため、上記の方法はブロッコリー中スルフォラファンの抽出・分析方法として適切であることが明らかになった。 次に、ブロッコリーを試料として、生鮮組織に対する無極性ガス水和物の影響について検討した。ブロッコリー花蕾部を核磁気共鳴装置(NMR)用耐圧性ガラスセルに0.9 MPaのXeガスとともに封入し、1℃にて6 d保存した。比較用として-20℃で6 d凍結保存した試料も用意した。6 d貯蔵後の外観品質は、Xe貯蔵ではやや黄化し、組織の形態がやや崩れる傾向がみられた。また、水和物と考えられる白色の結晶が試料管内にて観察された。これは、Xe水和物が形成され、それが原因で、組織の損傷が起きたためと考えられた。冷凍貯蔵では、外観が保持された。プロトン緩和時間を測定した結果、Xe貯蔵では冷凍貯蔵に比べて著しく短かった。このことから、外観では変化が大きかったXe貯蔵の方が、冷凍貯蔵よりも内部組織の損傷程度は低い可能性が示された。解離のため、新鮮な試料、Xe貯蔵後、冷凍貯蔵後の試料を20℃で1 d貯蔵した後の外観を観察した結果、新鮮な試料はほとんど変化がなかった。Xe貯蔵では、白色の水和物が消失した以外は、貯蔵前とあまり変化はなかった。冷凍貯蔵では、緑色が濃くなり、外観が大きく変化した。Xe貯蔵、冷凍貯蔵とも制限拡散係数が新鮮な試料よりも大きくなったことから、組織が損傷した可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ブロッコリー花蕾部をNMR用耐圧性ガラスセルに0.9 MPaのXeガスとともに封入し、1℃にて6 d保存する実験と、比較用として-20℃で6 d凍結保存する実験を行った。6 d貯蔵後の外観品質を評価するとともにプロトン緩和時間を測定した結果、両実験条件間で明確な違いが認められた。このことは、貯蔵条件が適切であったことを意味しており、さらに、NMRを使用した実験は平成25年度以降に開始する計画であったことから、当初の計画以上に進展していると考えられる。 Xe水和物解離のため、新鮮な試料、Xe貯蔵後、冷凍貯蔵後の試料を20℃で1 d貯蔵した後の外観品質を評価するとともに制限拡散係数を測定した結果、実験条件間で相互に明確な違いが認められた。このことは、貯蔵条件が適切であったことを意味しており、さらに、NMRを使用した実験は平成25年度以降に開始する計画であったことから、当初の計画以上に進展していると考えられる。 ブロッコリーを試料として、スルフォラファン抽出及び分析法を検討した結果、ブロッコリー花蕾部を粉砕した後、ジクロロメタンで疎水性物質を抽出し、ロータリーエバポレーターで蒸発乾固した後、アセトニトリルで再び溶解、最後に遠心分離した後、メンブランフィルターで濾過して、分析用試料とする方法が、分析の前処理方法として適切であることが明らかになった。さらに、高速液体クロマトグラフ-質量分析計(LC-MS)で分析した結果を過去の文献値と比較したところ、ほぼ同水準であることが確認できたため、現在までに検討した方法は、ブロッコリー中スルフォラファンの抽出・分析方法として適切であることが確認された。この成果は、交付申請時の目的を達成している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、高圧ガス処理によるガスハイドレート形成が、アブラナ科野菜に含まれるスルフォラファンの生成促進への影響について調べるとともに、促進機作についても併せて解明する。 ブロッコリー花蕾部をステンレスチャンバーに入れ、ガスハイドレート形成が見込まれるXe 0.9 MPa、1℃の環境条件下で数時間静置する。併せて凍結(-20℃)と、対照区としての無処理も用意する。全ての試験区について、処理後は20℃で1日間保存し、ミロシナーゼが触媒するスルフォラファン生成反応を促進させる。処理前後の試料のグルコシノレート減少量、スルフォラファン増加量、ミロシナーゼ活性を測定し、スルフォラファン増強効果を評価する。 青果物外観は、品質評価項目として重要である。そこで、Xeによる処理条件と外観品質の関係を調べる。 Xe圧力と保存温度を数水準変化させた条件でブロッコリー花蕾部を保存した後、20℃保存で水和物を解離し、スルフォラファン濃度を測定する。スルフォラファン増強効果が認められた条件にて外観品質との関係を評価し、商品性を保ちつつ機能性物質を増強することが可能な保存条件を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究計画には必須の物品であるXeガスを購入する。試料代としてブロッコリー、キャベツ等のアブラナ科野菜購入費を執行する。スルフォラファン等ターゲット代謝物分析に必要な標準物質やLC-MS用カラム、ミロシナーゼ活性分析キット等試薬と、野菜保存用耐圧容器、ステンレス管、圧力計、分析用ガラス器具、NMR用石英セル等ガラス・ステンレス器具を購入する。 本研究計画を進める上での体制は、東京大学と島根大学という2つの異なる機関によって構成されているため、打合せのための旅費を執行する。併せて、研究成果発表に要する旅費も執行する予定である。さらに、分析に必要な装置(LC-MS、NMR)の修繕費を執行する。
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