トランジェント発現のためのレポーター遺伝子としてGUS遺伝子またはintron-GUS遺伝子を保持するAgrobacterium tumefaciens LBA4404株を接種試験に使用した。昨年度までの研究からイチゴやサラダカブの塊根にA. tumefaciens培養液を注射器により接種することで、植物組織でのレポーター遺伝子の発現を示すGUS活性が測定されたが、注射器を用いての培養液の接種では、一度に多量のサンプルを処理するには適していない。一方、バキュームインフィルトレーション法は植物の葉を減圧条件下でA. tumefaciens培養液に浸漬する方法で大量のサンプルをいっぺんに処理することができる。また、植物工場での栽培が盛んなレタスなどにそのまま適用可能な接種方法である。昨年度の研究から若いレタスの葉にA. tumefaciens培養液を接種することで、intron-GUSレポーター遺伝子の発現が増加した。しかし、その発現量のばらつきが大きく安定した結果を得ることができなかった。 本年度は、レタスに加え以前の研究でレポーター遺伝子の発現が確認されたカブと同族のコマツナ、チンゲンサイにもA. tumefaciensを接種した。試験した植物の内、コマツナでもっとも高いGUS活性(1.01 U/g-fresh weight)が得られた。これは、レタスで得られた最も高い活性の2倍程度であった。しかし、この活性はイントロンを持たないgus遺伝子をもつA. tumefaciensを接種した結果得られたもので、この活性値には本来の目的である植物でのレポーター遺伝子の発現に加えて、A. tumefaciens中でのレポーター遺伝子の発現が含まれる。A. tumefaciens中でのレポーター遺伝子の発現の無いintron-gus遺伝子を持つA. tumefaciensを使用した場合は、1/100程度の活性しか見られなかった。
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