研究課題/領域番号 |
24658212
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
内野 敏剛 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70134393)
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研究分担者 |
田中 史彦 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30284912)
濱中 大介 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (60399095)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | バイオフィルム / 共焦点レーザー顕微鏡 / 細胞外多糖類 / 微細構造 / インデンテーション法 |
研究概要 |
青果物に付着する病原微生物による健康被害の軽減を最終目的とし、青果物や食品表面、あるいは食品工場設備に発現するバイオフィルムの形態を細胞外マトリクスと生菌に分類してその構造を経時的に観察し、バイオフィルム の発生から脱離までの微細な形態変化の究明を行おうとするものである。 今年度は乳脂肪球皮膜(MFGM)のバイオフィルムの付着・生成能への影響につき調査した。すなわち、種々の濃度のMFGM(スフィンゴ脂質等)により、バイオフィルムを付着させる試片表面を調製し、乳関連微生物が生ずるバイオフィルムの試片への付着・生成能について蛍光顕微鏡と共焦点レーザー顕微鏡により観察し、データをコンピュータ上に蓄積した。これらのデータは現在詳細に解析中であるが、既に共焦点レーザー顕微鏡のデータから3次元画像を得ることに成功した。 また、バイオフィルムの洗浄効率は硬度や弾性率に比例して低下するとされることから、インデンテーション法を用いてバイオフィルムの力学的評価方法の確立を検討した。ここでは、Pseudomonas putidaを供試菌とし、試片表面に付着・成長したバイオフィルムに小型万能試験機で20μmの絶対変位を与え、負荷と除荷を繰り返した。これにより、バイオフィルムの硬度と弾性率を算出しようとしたが、プランジャがバイオフィルム表面水に接触して生じる表面張力により誤差を生じるため、表面張力をゼロとして補正することにより、硬度、弾性率を得ることが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バイオフィルムの形成と染色に関しては予定通りに進捗し、共焦点レーザー顕微鏡による観察を計画通りに行った。また、環境がバイオフィルムの構造や消長に及ぼす影響の解明のうち、共焦点レーザー顕微鏡から得られたデータから3次元画像を形成することにについては今年度結果を得ていることから、一部は研究を達成していると考えている。しかしながら、環境の変動とバイオフィルム消長、および、固形培地によるバイオフィルムの形成については研究方向を変え、バイオフィルムの力学的性質の解明に焦点を当てたため、今年度は着手していない。申請書に記入していなかった力学的性質についての研究が進展したことから、総合的にはおおむね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はバイオフィルムの菌体と細胞外多糖類の染め分けを鮮明に行いたい。これにより明確なバイオフィルム構造を共焦点レーザー顕微鏡で観察可能となり、立体構造が明確化すると思われる。 また、力学的性質の解明は非常に重要であるので、インデンテーション法を発展させるとともに、対象が非常に微小であることから、原子間力顕微鏡の使用等も視野に入れ、精度が高いデータの取得を心がけていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度からの未使用額と今年度請求額の合計が1,822,592円となる。研究に必要な設備備品は現有のものが使用可能であることから、物品費は消耗品として132万円程度を充当する。研究内容として微生物の培養を主体的に行う必要があることから、ガラス器具、薬品、培地、プラスチック容器類が消耗品として必要となる。また、調査および成果発表のため、国内旅費として30万円を計上する。20万円(5千円×2名×20日)は実験補助のための謝金とする。 以下に研究費の使途をまとめる。 物品費:1,322,592円、旅費:300,000円、人件費・謝金:200,000円、その他:0円、計:1,822,592円
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