輸入量が多いサトイモを対象とし、蛍光指紋による土物類の産地判別の可能性を明らかにすることを目的とした。 試料には2008年度産の生鮮サトイモを用い、日本産117サンプル、中国産23サンプルを用意した。計測条件を揃えるため、サトイモは購入後に皮をむきハンマーでつぶしてから冷凍保存し、計測直前にマルチビーズショッカーを用いてホモジナイズした。サンプルを粉末試料セルに封入し、分光蛍光光度計を用いて各2回蛍光指紋を計測した。計測範囲は励起、蛍光波長ともに200~900nm、波長間隔は10nmに設定した。解析は各波長の蛍光強度を説明変数、産地を目的変数として正準判別分析を行った。その際データを、判別式を作成するキャリブレーションセットと判別式の有効性を検証するバリデーションセットへとランダムに二分した。変数選択を行い判別に有用な波長条件を抽出した。また得られた正準変数を用いて、中国産を陽性、日本産を陰性としてROC曲線を描いた。ROC曲線は判別精度の指標の1つで、陰性試料のうち誤判別される割合(偽陽性率)を横軸に、陽性試料のうち正しく判別される割合(感度)を縦軸にとり、曲線下の面積で判別精度が算出される。同一サンプルを用いた微量元素およびSr安定同位体による産地判別結果との精度比較をROC曲線で行った。 変数選択の結果、3波長条件が選ばれた。この時の誤判別率はキャリブレーションセットで6.34%、バリデーションセットで9.42%だった。したがって、サトイモを対象とした場合、本手法により十分に産地を判別することが可能であることが明らかとなった。またROC曲線下の面積は0.973だった。ここから、微量元素および安定同位体比分析と同等程度の判別能力を持つことが示された。
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