研究課題/領域番号 |
24658222
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
西邑 隆徳 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (10237729)
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研究分担者 |
保坂 善真 鳥取大学, 農学部, 准教授 (00337023)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 霜降り肉 / 筋肉内脂肪 / 脂肪細胞 / 筋肉内結合組織 / 細胞外マトリックス |
研究概要 |
筋肉内脂肪組織発達に伴う骨格筋細胞外マトリックスのリモデリング機構を追求するために、脂肪細胞がコラーゲンマトリックスをリモデリングする様相をin vitro培養系を用いて検討するとともに、in vivoモデル実験系の確立を目指した。 I型コラーゲンゲル中で3T3-L1脂肪前駆細胞を培養し、その分化様相ならびにコラーゲンゲル構造の変化を観察した。培養6日目にはコラーゲンゲルが脂肪前駆細胞に覆われ、脂肪前駆細胞の周りに穴が見られていた。培養22日目には、成熟脂肪細胞の周りに細いコラーゲン線維のネットワークが認められ、コラーゲンゲル構造が脂肪細胞によってリモデリングされることが示唆された。これらのゲル構造変化に脂肪細胞が産生するコラーゲン分解酵素(MMP)が関与しているか調べるために、MMP inhibitorIIおよびGM6001を培地に添加し脂肪細胞をゲル内培養したが、ゲル構造に対照区との差は見られなかった。次に、ラット骨格筋から調製した筋肉内結合組織を培養基質として脂肪前駆細胞を培養し、その構造変化を走査型電子顕微鏡で観察した。筋周膜部分では8日目と11日目に成熟した脂肪細胞が確認され、その周りに脂肪細胞が構築したと思われるECMが確認された。 次に、マウス前脛骨筋に50%グリセリンを注入した後、経時的に骨格筋を採取し組織切片を作製してヘマトキシリン・エオジン染色した。グリセリン注入3日後には筋組織の萎縮崩壊がみられた。7日目には脂肪滴を蓄えている細胞がみられるようになり、10-14日後には単房性の脂肪細胞が細血管の周辺部に集合し脂肪組織を構築しているのが観察された。以上より、マウス骨格筋にグリセリンを注入することで人為的に骨格筋内に脂肪組織蓄積を誘導できることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、筋肉内脂肪組織発達に伴う骨格筋細胞外マトリックスのリモデリング機構を追求するためのin vitroおよびin vivoモデル実験系の確立を目指した。その結果、in vitro培養系では、コラーゲンゲル中で脂肪細胞を培養する方法ならびに筋肉内結合組織を骨格筋より調製し培養基質として用いる培養系の2つを確立できた。また、in vivoモデル実験系としては、マウス骨格筋にグリセリンを注入することで骨格筋内に脂肪組織を誘導・形成させることができた。これらは骨格筋細胞外マトリックスのリモデリング機構を追求する上で非常に需要な成果であり、本研究はほぼ順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度確立されたin vitroおよびin vivoモデル実験系を用いて、筋肉内脂肪組織発達に伴う骨格筋細胞外マトリックスのリモデリング機構を追求する。具体的には、コラーゲンゲル中でMMPノックダウン脂肪細胞を培養しゲル構造の変化を観察するとともに、筋肉内結合組織を基質とする培養系でも同様に検討する。さらに、グリセリン注入骨格筋モデル実験系を用いて、脂肪細胞が細胞外マトリックスを骨格筋内に構築する様相を細胞消化・走査電顕法で詳細に検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は本研究の最終年度であり、昨年度に確立したin vitroおよびin vivoモデル実験系を最大限活用し筋肉内脂肪蓄積時の脂肪細胞による骨格筋細胞外マトリックスのリモデリング機構の解明を目指す。このため、実験動物の購入費および分析用試薬類などの物品費ならびに成果発表のための学会参加旅費に研究費を使用する予定である。
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