東京電力福島第一原子力発電所爆発に伴い設定された警戒区域に残されたウシを警戒区域内の一か所の牧場(9.2ha)に集め、放射性物質汚染の実態と汚染が生体へ及ぼす影響を調査しながら、草地並びに林地の除染法を開発することを目的とした。保護牛並びに放牧による草地・林地のセシウム(Cs)汚染状況を2011年11月~2012年10月にかけて調査した。 保護牛の血中Cs汚染状況は、冬期間に清浄飼料を給与されてきた2012年4月には18.1±14.8Bq/kg(66頭)、汚染された放牧草及び近隣から生産された汚染飼料を給与されてきた8月には68.8±28.8Bq/kg(69頭)であった。清浄飼料給与により2ヵ月程度で清浄化することが明らかとなった。草地並びに林地に関しては、地形条件と牛舎からの距離に応じて5つのサンプリング地点を設けた。対照として各地点に5×5mの禁牧区を設定し、隣接する放牧区とともに植生地上部、リターおよび土壌のサンプリングを計5回実施した。植生地上部とリターは50cm四方のコドラートで採取し、土壌はライナー採土器を用いて深さ2cmまでの表層、2~7cmの浅層、7~22cmの深層を層別に採取した。加えて4月の調査時からは放牧地を50m四方の区画に分割し、地上1mでの空間線量率をサーベイメータで測定した。空間線量率は、4月の平均1.95μSvから12月の1.55μSvまで80%減衰した。すなわち、過放牧により放牧地全体は自然減衰より5%多く減衰した。局所的には、11~10月までの11ヶ月間で植生~深層土壌までの総Cs沈着量は牛舎近くの斜面上部で25万Bq/m2(当初の38%相当)減少、牛舎近くの斜面下部で16万Bq/m2(当初の27%相当)増加した。増加分は土壌浅層以下へのCs沈着が多くなった。
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