【目的】平成20年に総務省が動物の行動を追跡する無線システムに電波を割り当てたことを受け、①平成24年度には、その電波帯を利用した放牧牛リアルタイム監視装置を開発し、その性能を検証した。②平成25年度には、他個体存在による電波の反射が課題として抽出されたため、牛群構成牛の中心となるハブ個体の抽出を目的とした。 【方法】①調査は、福島県南相馬市の旧警戒区域内の放牧地(9.8ha)で行った。そこで管理されている保護牛のうち、乳用種雌牛3頭に動物専用発信機とGPS受信機をそれぞれ1台ずつ装着した。そして、5つの受信局を放牧地全体がカバーできるように設置した。受信局を介して得られたデータは、FOMA回線網のパケット通信によりサーバーに転送され、Web上においてリアルタイムで位置座標を示すように設定した。専用発信機、GPS受信機による測位データは21.5時間連続記録し、同時に、日中の6.5時間、発信機装着牛の行動を10分間隔で記録した。②調査は山梨県北杜市のK牧場で行った。そこに放牧されている24頭の搾乳牛を調査対象牛とした。そして、放牧開始から終了までの1日約6時間、全調査牛の最近接個体を15分間隔で、親和行動を供受の区別をして連続記録した。後日、得られたデータをソーシャルネットワーク解析専用ソフトであるPajek1.01を用いてハブ個体を抽出した。 【結果】①本監視装置とGPS受信機による測位座標の測位誤差は、90.1±11.8mだった。最大誤差は、745.2mで、最小誤差は2.4mだった。測位誤差は発信機装着牛に行動によって異なり(P=0.06)、休息中の測位誤差(66.3m)が最も小さかった(摂食94.7m、移動80.0m)。②空間的解析と行動的解析の双方で、有意(P<0.05)に多く観察されたダイアドの組み合わせから、同ソフトによる解析を行い、ハブ個体の抽出に成功した。
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