研究課題/領域番号 |
24658228
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
池内 義秀 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (90168112)
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研究分担者 |
辰巳 隆一 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (40250493)
水野谷 航 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (20404056)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 筋線維タイプ / 骨格筋 / 食肉 / 単離筋線維 / 運動 / ミオシン重鎖 / 筋萎縮 / 培養細胞 |
研究概要 |
骨格筋(食肉)の筋線維タイプは食肉の肉質や栄養機能性の重要な決定要因であるが、その調節機序については、責任遺伝子・分子シグナル・発現場所・変化時期など、いまだ不明な点が数多く残されている。筋線維タイプの変換は成熟筋線維で生じる現象だと考えられているが、現在普及している細胞株(C2C12やL6)では、成熟筋線維まで分化させる事は極めて困難である。そこで本研究では、①マウス・ラットの単離筋線維の長期(1週間以上)培養法を確立する、②生体で観察される運動トレーニングや不活動による筋線維タイプの変化を、長期培養筋線維とin vitro細胞伸展装置を用いて再現することを目的とした。本年度はまず①に取り組んだ。筋線維の単離培養法について、マウスのプロトコルが報告されているので(Wozniak and Anderson,2005)、ラットでも応用が可能か検討した。検討の結果、細胞を分散させるためのコラゲナーゼ処理条件と、筋組織の種類が生存率に大きく影響をすることが分かり、現在まで、短趾屈筋(FDB)とWorthington社のCollagenase, Type 2を用いると、ラット単離筋線維の生存率を培養7日目でも90%以上に維持できることに成功した。FDB筋組織のミオシン重鎖組成をSDS-PAGEで調べた結果、MyHC2Aと2Xが約50%ずつで構成されることが分かった。FDB筋線維の単離直後のMyHC組成を調べ、組織の組成比と比較したところ、差はなかった。従って単離操作に伴い、特定の筋線維タイプだけ選別されるわけではないことがわかった。一方MyHCのバンド強度は培養の経過に伴い低下することが分かった。この変化は、筋原線維タンパク質の分解によるものと思われ、恐らく単離、培養過程が筋の不活動を反映していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ラットの骨格筋から単離筋線維を長期培養可能な実験系を確立した。単離操作および培養に伴い、筋線維タイプの変化は見られなかったが、萎縮を反映すると考えられる変化を見出した。培養細胞で筋萎縮モデルは存在していなかったため、新たな応用の可能性を見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
まず単離筋線維で筋萎縮が生じていることを明確にするため、筋線維の直径、総タンパク質量、筋萎縮マーカー分子(Atrogin1, MURF1)の発現量を培養7日間まで経時的に測定し、単離筋線維が当初の予定と異なるが、筋萎縮モデルとして適用できるか確認する。 次に単離筋線維に①物理的刺激(振盪刺激、伸展刺激、電気刺激)、 ②化学的刺激(アセチルコリン、IGF-1等の成長因子添加)、③培養環境(神経細胞との共培養、ハイドロゲル、Matrigel)を単独あるいは組み合わせて処理し、運動トレーニングをシミュレート可能か検討する。ここで言う運動トレーニングは低強度の刺激による有酸素運動と、高強度の刺激によるレジスタンス運動の2種類の運動環境を想定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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