研究課題/領域番号 |
24658230
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研究機関 | 麻布大学 |
研究代表者 |
小西 良子 麻布大学, その他部局等, 教授 (10195761)
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キーワード | ニホンジカ / EHEC / Salmonella / Listeria / PCR / Pseudomonas / Raoultella |
研究概要 |
昨今、日本ではシカの個体数増加と生息域の拡大により、苗木の食害や立木の皮剥ぎなどに起因する。このような現状を打破する対策の一つとして個体数調整が各県で行われているが、多くは捕獲個体の処分に止まり、多額の出費が問題となっている。そこで、捕獲したシカを資源として有効活用する方法として食肉利用が期待されているが、野性動物は家畜と異なり、衛生管理がほとんど行われておらず、保有している微生物のデータが非常に少ないことが、食肉として広く普及するうえでの妨げとなっている。本研究では、食品衛生法上、食肉でよく見られる食中毒の原因菌である病原性大腸菌、Salmonella属菌、Listeria monocytogenesの保有状況を分析し検討した。静岡県富士宮市富士山麓地域において2012年10月と12月、2013年5月に野生ニホンジカの試料採取を行った。試料は、各選択培地で分離培養を行い、種々のコロニーを、16SrRNAを標的としたPCR法により各属菌を確認し同定した。病原性大腸菌はEHEC、ETEC、EIEC、EPEC、EAggECのそれぞれが特徴的に保持する遺伝子に特異的なプライマーを用いて、PCR法で同定を行った。ニホンジカ試料39頭から、CT-SMACでは54株、Chromagar Listeriaでは59株、MLCBでは65株が分離された。MLCB培地由来菌株からは、Salmonella属菌と同定された菌株は、7株(10.8%)であった。そして、Salmonella属以外の菌種については、Raoultella ornithinolyticaが8株(12.3%)、Escherichia fergusoniiが5株(7.69%)、Pseudomonas aeruqinosaが3株(4.62%)などの病原性が認められる菌種が同定された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニホンシカの検体の採取が当初の計画より少ないことが問題であるが、今まで報告されていない食品衛生学的に問題になる食中毒細菌が同定され、ジビエの衛生管理に必要な検査項目を選定することができた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度には、いままで検出された食品衛生上問題となる細菌、寄生虫を対象に 核酸クロマトグラフィー法を開発する。もっとも重要な4項目に対して、簡便で高感度な一斉試験法を開発、確立する。 また、Chromagar Listeria培地由来菌株からは、PCR法により8菌株がListeria属だと思われたが、同定されたのは2株で、Listeria innocuaであったが、本菌のヒトに対する病原性は未だ報告されていない。このようにジビエに生息するが、人への危害性がわかっていない食中毒細菌の病原性を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
ニホンジカの件の検体購入費および輸送費、旅費として使用予定のあった予算であるが、当初の計画ほど検体が集まらなかったことから、次年度の使用額が生じた。 最終年度は、ニホンジカのほかにエゾジカも用いて、開発する一斉試験法を用い、その有効性および実態調査を行う。さらにシカから検出されたが、ヒトではまだ食中毒事例のないリステリアの病原性についても検討する。
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