本年度は、シカの筋肉中に寄生する住肉胞子虫についての迅速検出法としてLAMP法およびNASBAー核酸クロマト法を開発した。シカに寄生する種は馬に寄生する種と似ており、馬の住肉胞子虫の検出法と同じ方法が使えることが分かった。また、シカの本寄生虫の感染率はほぼ100%といわれ、陰性検体を調達することが困難であったことから、筋肉組成も類似している馬肉を用いて、迅速法の検出限界および陽性率を検討した。馬肉の部位は外モモ、モモ、ヒレの3箇所で全90検体を用いた。それぞれの検体の住肉胞子虫寄生濃度はリアルタイムPCRで測定した。 LAMP法ではプライマーは、C-gADF-F3:5'-CCAGCACAGAACTGTACTG-3'、C-gADF-B3:5'-AA GCCGGTGAATGAACAG-3'、C-gADF-FI、5'-TCAGTCCACCTTCCTGGCTTTACTGCGTGTGATGAG AAG-3'、C-gADF-BIP:5'-TTGCGGTA GTGCTGATTTGTGTAGACCACAGCACACTTGTT-3'、C-gADF-Loo p:F5'-TCCTGTTACTTCCTGTGTTCTG-3'、C-gADF-LoopB:5'-AGTCACCACGCAACAGTT-3'を用いて行った。リアルタイムPCR法で得られた結果とLAMP法での結果の陽性一致率は、85.6%%であった。偽陽性は0 %であった。検出限界は10^4/gと推測された。 一方NASBAー核酸クロマト法では、陽性率は78%であり、偽陽性は 0%であった。しかしながら、バンドが読みにくかったり、肉に含まれる鉄分の影響で増殖阻害が起こる頻度が部位によっては高かった。検出限界はLAMP法と同等の10^4/gと推測された。 これらの結果から、LAMP法のほうがやや検出率が高かったが、初年度に検討した食中毒細菌検出LAMP法と組み合わせることで、細菌と寄生虫を同時に検出する系の確立は可能であることが示された。また、NASBA-核酸法でも、細菌検出法を確立することにより、フィールドでの危害物質検査が可能となる。
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