研究課題/領域番号 |
24658231
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
眞鍋 昇 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (80243070)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 卵子救済 / 卵巣内潜在的卵子 / アポトーシス阻害因子 / 顆粒層細胞 / 卵胞選抜 / 哺乳類 / 卵巣 / 発現制御 |
研究概要 |
哺乳類においては様々な動物発生工学技術が編み出され、体細胞クローン動物やプリオン遺伝子ノックアウトウシのような遺伝子改変動物を作出できるようになってきた。しかしこれらに供する卵母細胞が不足しており、その確保は急務である。哺乳類の卵胞・卵母細胞の死滅を調節している数々の細胞内因子を同定し、その制御機構を解明する過程でいくつかの因子が細胞死を阻害することで卵胞・卵母細胞の死滅を調節していることを明らかにしてきたが、本研究では、細胞死阻害因子の遺伝子を食肉処理場で得た卵胞上皮細胞に導入して卵胞閉鎖を阻害し、これを異種移植して救命して利用する潜在的卵母細胞救命法を創出しようとするものである。本年度、細胞死阻害因子を調節している因子の探索とその分子制御機構の解明を進めとともに阻害因子の発現を人為的に調節することで卵胞・卵子の救命が可能であることを確認し、卵巣組織細片への一過性の遺伝子導入、卵巣組織細片の凍結保存、凍結融解後の組織細片の免疫不全マウスの腎漿膜下腔への異種移植とそこでの卵胞発育の誘導、ならびにこのようにして得た卵子の体外成熟と体外受精および胚の発育能の評価を進めた。より優れた救命因子として可溶性受容体、囮受容体等の検索を進めるとともに顆粒層細胞のアポトーシス調節因子ゲートキーパーp53の卵胞組織における機能を解析し、アポトーシス阻害因子遺伝子導入と異種移植による卵巣内潜在的卵母細胞の救命法の創出におけるこれらの有用性を検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成23年3月11日に研究室所在地の笠間市では震度6強を5分間以上の震災を経験し、これによって多くの研究設備・機器が破損したり修理を要する状況になり、平成24年になってもこれらは完全に回復していない。完全に回復するものと想定して研究計画調書を作成したが、よって研究の進展が遅れた。しかし、卵胞の選択的死滅を調節しているアポトーシス阻害因子の発現推移を詳細にしらべ、それの制御においてインターロイキン6が重要な司令塔的な役割を果たしていることを見出すことができた。さらにこれに関連する囮受容体にかかわる研究については論文化できた。
|
今後の研究の推進方策 |
上述のように、震災に起因するハードウエアーの不備に起因する研究進展の遅滞を除けば、概ね順調に進捗している。また破損したり修理を要する研究設備・機器の新調や修繕もおおむね終えることができたので、研究計画調書に記載した年次計画に従って粛々と遂行して、最終年度までには当初の目標を達成する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
(1)「顆粒層細胞におけるアポトーシス・シグナルの阻害因子(cFLIP、XIAP、囮受容体3など)の発現を指標にすれば卵子の健常度を見極めることができる」との仮説の確認(A)卵子の正常性、体外授精後の初期胚の発生の正常性、卵胞液の性状、これらと同じ卵胞内の顆粒層細胞における阻害因子(cFLIP、XIAP、囮受容体3など)の発現レベルとの関連性の精査:A-1. 卵胞(卵子、顆粒層細胞)の調製・A-2. 卵子の受精能および初期胚の正常性の評価・A-3. 顆粒層細胞における阻害因子(cFLIP、XIAP、囮受容体3など)の発現推移・A-4. 顆粒層細胞における性腺刺激ホルモン受容体などの発現推移 (2)阻害因子(cFLIP、XIAP、囮受容体3など)発現の調節因子探索とその分子制御機構:(A)阻害因子(cFLIP、XIAP、囮受容体3など)発現を調節している因子の探索・(B)阻害因子(cFLIP、XIAP、囮受容体3など)発現の調節機構の解析 (3)阻害因子(cFLIP、XIAP、囮受容体3など)発現を人為的に調節することで卵子の救命が可能か否かの確認:(A)凍結保存・異種移植・遺伝子導入・卵子の体外成熟と体外受精および初期胚の体外培養からなるシステムの統合 〔研究協力者〕ラトキー教授(ハンガリー・ブダペスト聖イステファン大学獣医学部/ハンガリー国立家畜繁殖研究所):大型家畜を用いてin vivo 導入やRNAiにて阻害因子(cFLIP、XIAP、囮受容体3など)の発現を人為的に制御した場合の卵胞発育の実証的精査・ロドリゲス教授(カナダ・サスカチュワン大学獣医学部):家畜の顆粒層細胞由来の不死化細胞株の開発研究・デスムリエール教授(フランス・リモージュ大学薬学部):より効率的なin vivo入法およびRNAi法の開発研究
|