研究課題/領域番号 |
24658233
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
池田 俊太郎 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (50447893)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 体外受精 / 体外培養 / IVM-F-C / 胚盤胞 / 脂質 / 乳化 / 栄養と繁殖 |
研究概要 |
卵子と精子の融合によって受精卵ができる。受精卵は細胞分裂を繰り返し、ヒトの場合、受精後5日目に、百個程度の細胞からなる胚盤胞と呼ばれる発生段階に達する。家畜として有用性の高いウシの場合は、受精後6~8日目に胚盤胞となる。胚盤胞は比較的簡易な方法で子宮へ移植(胚移植)することが可能である。ヒト、家畜いずれにおいても、この胚盤胞までの体外培養方法が確立されており、生殖医療や家畜の効率的生産に応用されている。ヒトの受精卵の全てが胚盤胞まで発生できるとは限らないことが、報道などによって一般の方にも広く知られてきているが、実は家畜においても同様の問題を抱えている。家畜の受精卵が胚盤胞まで発生できるかどうかは、卵子の段階でも大きく決まっているが、受精卵がストレスを受けたり、体外培養条件に不備があると、本来胚盤胞に発生できるはずの受精卵もそれができなくなる。本研究は、体外培養条件の改善によって胚盤胞発生を促進することを目指す研究の一つとして行っている。 ウシの受精卵の培養液は通常水に溶ける物質のみで作られ、油のような水に溶けない物質(脂質)は用いられない。しかし、脂質には様々な生理作用を有する多くの物質が含まれる。本年度は、受精卵の培養液への脂質の添加方法として、乳化を用いた方法を検討した。乳化剤の種類と濃度および乳化方法を検討し、中鎖脂肪酸油、オレイン酸、α-トコフェロールの簡易な乳化方法を確立した。調製した乳化製剤をウシ体外受精卵の培養液に添加したところ、乳化α-トコフェロール製剤に胚盤胞発生を促進する活性が見られた。一方、乳化中鎖脂肪酸油、乳化オレイン酸には逆に胚盤胞発生を阻害する活性が見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、植物油に含まれることが予想された胚盤胞発生を促進する活性を持つ脂溶性の因子(脂質)を同定し、その乳化製剤を培養液に添加することによって、ウシ体外受精胚の発生促進を目指したものである。当初、活性因子として脂肪酸を予想していたが、実際に同定されたものは脂溶性ビタミンの一種であるα-トコフェロールであった。活性因子が脂肪酸であることを前提とした試験計画があったため、その実施には至らなかったが、植物油中に含まれる活性因子の同定、培養液調製において有用な、簡易な脂質乳化方法の確立を達成しており、胚発生促進のメカニズム解明を中心とする次年度の研究に繋げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
効果の確認された乳化α-トコフェロールについて、その効果のメカニズムを胚の遺伝子発現の網羅的解析から検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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