研究課題/領域番号 |
24658234
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
南 直治郎 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30212236)
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研究分担者 |
金子 武人 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30332878)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 産み分け / 受精阻害 / 細胞間架橋 / 性染色体 |
研究概要 |
申請者はこれまでの研究で、受精阻害を目的として6系統の遺伝子組換え雄マウスの作出を行い、交配実験を行った結果、3系統が不妊であった。このことから、これら3系統のマウスでは受精阻害遺伝子A(これまでの研究で探索された遺伝子) が機能したことで不妊になったことが予測される。このことは、導入された受精阻害遺伝子産物が細胞間架橋を通ってすべての精子細胞に伝達されたため、すべての精子が受精できなくなったと考えられる。このことから、本研究で構築した受精阻害遺伝子が受精阻害機構の構築に有効に利用できることが明らかとなった。また作出した1系統のマウスでは生まれてくる産子がすべて組換え遺伝子を持っていないという結果が得られている。このことはこの組換え遺伝子Aを持った精子は受精できなく、この遺伝子を持っていない精子のみが受精したと解釈できる。これは、組換え遺伝子Aの産物が遺伝子Aを持っていない隣接細胞には伝わらなかったことを意味し、この組換えマウスにおいては組換え遺伝子産物が細胞間架橋を通過しない仕組みを備えていることになる。このことが実証されれば、細胞間架橋通過阻害の機構も解決されたことになる。以上の成果は本課題を最終的に解決する上で極めて重要なシーズである。この遺伝子Aを持つ組換え個体は遺伝子組み換え産子を次世代に残すことができないので、これらの個体の精子を用いて、顕微受精あるいは体外受精を行って、産子を得ることを試み、1系統において後継産子を得ることができたが、出生直後に喰殺によって死亡したため、現在さらに顕微受精による産子の作出を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
受精阻害遺伝子が機能することが明らかになったが、受精阻害によって自然交配では産子が得られないことから、さらなる解析のためには顕微受精によって産子を得た。しかしながら、喰殺により産子の解析が行えなかったことから、実験がやや滞った。また、細胞間架橋通過阻止の仕組みの開発のために、Smok1遺伝子の5’UTRおよび3’UTRを組み込んだ遺伝子組み換えマウスの作製については5’UTRの特殊な配列のためか、組換えベクターへの組込みにかなり時間を要しており、組換えベクターの構築もう少し時間がかかりそうである。
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今後の研究の推進方策 |
受精阻害の機構がほぼ確定しているので、細胞間架橋通過阻止の機構の確立のため、Smok1遺伝子の5’UTRおよび3’UTRを組み込んだ遺伝子をもつ遺伝子組み換えマウスを作出する。この組換えマウスの精巣において転写産物が精子細胞間を通過しないかどうかについて、GFPマーカー遺伝子の発現あるいはin situ hybridization法によって確認する。また、同時に性染色体への組込み位置を決定するため、X染色体およびY染色体の遺伝子発現領域を解析し、その領域を含むBACクローンを探索する。BACクローンへのマーカー遺伝子の導入部位を確定し、組換え遺伝子の設計を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の計画において、組換えベクターの構築に時間がかかったため、遺伝子組み換えマウスの作製ができなかった。そのためこの経費は次年度の組換えマウス作製のために使用する。また、上述した課題を解決するためには受精阻害と細胞間架橋の通過阻止の特性を持ち合わせる組換え遺伝子を性染色体に組み込む必要がある。性染色体ではヘテロクロマチン領域が広く存在するために、組み込んだ遺伝子が発現しないことが想定される。そのために、あらかじめ遺伝子発現量域を確認して、ノックインマウスを作出する必要がある。この目的を達成するためにBACクローンの情報収集を行う。BACライブラリーは約150-200kbの長さを持つクローンからなっており、長い全長を持つことから遺伝子が組み込まれた周囲のゲノムの影響を受けることなく、 BACの配列に含まれる染色体情報を正確に反映することがその特徴となっている。 XおよびY染色体の遺伝子発現情報を解析し、 特定の遺伝子の発現部位のやや下流域のBACクローンを選択し、性染色体上のノックイン領域を特定する。
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