研究課題/領域番号 |
24658238
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
枝重 圭祐 高知大学, 教育研究部総合科学系, 教授 (30175228)
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研究分担者 |
松川 和嗣 高知大学, 教育研究部総合科学系, 准教授 (00532160)
葛西 孫三郎 高知大学, 教育研究部総合科学系, 教授 (60152617)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 低温傷害 / ブタ卵子・胚 / TRPチャンネル |
研究概要 |
ブタやウシ等の一部の哺乳動物の生殖細胞や胚は温度感受性が極めて高く、低温や高温にさらされると傷害を受ける。しかしそのメカニズムは明らかではない。多くの細胞には温度変化を感知する温度センサーチャンネルが発現している。そこで、ブタの卵子/胚の低温傷害に着目し、これらの細胞の低温傷害に温度センサーチャンネルが関与しているかどうかをしらべた。 まず、温度感受性TRPチャンネルがブタの卵子で発現しているかどうかをしらべた。高温で作動するTRP-V1のmRNAは、ブタ未成熟卵子と成熟卵子のいずれにも発現していた。低温を感受して作動するTRP-A1とTRP-M8のうち、TRP-A1のmRNAもブタ未成熟卵子と成熟卵子のいずれも発現していた。一方、TRP-M8のmRNAは成熟卵子でのみ発現していた。次に、低温感受性TRPチャンネルがブタ卵子の低温傷害に関与しているかどうかを明らかにするために、ブタ未成熟卵子で発現しているTRP-A1に着目し、そのdsRNAをブタ未成熟卵子に注入して12時間成熟培養し、15℃で30分間低温処理した後、さらに36時間成熟培養した。dsRNAを注入していない未成熟卵子では、成熟培養後の生存率は大きく低下し、全ての卵子は成熟しなかった。一方、TRP-A1 dsRNA注入卵子では、生存率は低下せず、成熟した卵子も観察され、低温傷害が軽減されていた。したがって、低温感受性TRPチャンネルであるTRP-A1は、少なくともブタ未成熟卵子の低温傷害に関与していることが強く示唆された。また、ブタの桑実胚と拡大胚盤胞のいずれにおいても、成熟卵子と同様にTRP-A1とTRP-M8のmRNAが発現していたことから、これらの低温感受性チャンネルはブタ胚の低温傷害にも関与していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ブタの卵子と胚については、ほぼ計画通り順調に研究が進んでいる。しかし、ウシについては、高知県の屠場に出荷されるウシの頭数が極めて少ないため、卵子の入手と体外受精胚作製が難しく、研究が進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
ウシの卵子/胚の入手が困難なことを考慮し、ウシについては県外の研究協力者の支援を仰ぐ予定である。順調に進んでいるブタの卵子と胚の低温傷害における温度感受性TRPチャンネルの役割に関する研究については、より一層進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
・消耗品費は、低温感受性TRPチャンネルの発現を抑制するdsRNAの合成や、TRPチャンネルの発現量をしらべるための抗体費等の他、 培養用試薬と器材等にあてる。 ・旅費は、研究代表者と研究分担者の計2名が1回国内学会で発表することにあてる。 ・謝金等は、研究協力者(アルバイト学生)1名が1日6時間25日間実験補助を行うことにあてる。
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