研究概要 |
(1)従順性の系統差ならびに遺伝率; 本研究では、野生由来の近交系マウスの10系統(MSM, HMI, BLG2, PGN2, KJR, CHD, NJL, BFM/2, SWN,ならびにCAST/Ei)、日本の愛玩マウス1系統(JF1)ならびに、実験用マウス6系統(C3H, C57BL/6, CBA, DBA/2, BALB/c, 129)の計17系統を対象にした。各系統の雄それぞれ12個体、計204個体を用いて、6週齢および8週齢の2時点で行動解析を行った。マウスの従順性に関わる行動を評価するために、以下の3種のハンドリングテストを考案した。Active Tame Testでは、手に対するマウスの自発的な従順性行動を、Passive Tame Testでは、手に対するマウスの受動的な従順性行動を、Stay on Hand Testでは、強制的な刺激に対するマウスの従順性行動を評価した。分散分析の結果、全ての形質に関して、有意な系統差が認められた(p < 0.001)。これに加えて、広義の遺伝率を算出したところ、15-72%は遺伝要因に依ることが明らかになった。 (2)高密度SNPデータに基づいた系統解析; 近交系マウス9系統(MSM, HMI, BLG2, PGN2, KJR, CHD, NJL, BFM/2, ならびにSWN)の高密度SNPタイピングを行うために、9系統の3個体ずつ、計27個体を対象に、illumina社の高密度SNP Genotyping Arrayを使用し、計77,800 SNPsの遺伝子型を決定した。残りの8系統のSNP情報は、データベースを参照し取得した。系統解析の結果、国立遺伝学研究所が保有しているオリジナルな野生由来の近交系マウスは、既存の資源とは異なる遺伝的背景を有することが確認され、生物資源としての利用価値が高いことが明らかになった。
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