研究課題
牛白血病は、平成10年の届出伝染病指定後、全国的に発生数および白血病発症に伴う廃用数が激増している。牛白血病の発生原因は、ウイルス性と非ウイルス性に大きく二つに分かれ、このうち牛白血病ウイルス(Bovine leukemia virus: BLV)が原因となるBLV感染CD5陽性B細胞の腫瘍疾患である地方病型が主である。ウイルスが関与しない牛白血病は、散発型と呼ばれ、子牛型、胸腺型および皮膚型の3つに分類されるが、発生原因は不明である。近年、日本全国で若齢ウシの白血病発症の増加が報告され、近年激増しているBLV感染の関与が強く示唆されている。BLVはガン遺伝子を持たず、感染による白血病発症には5年から10年の長い潜伏期間を要することから、散発型の子牛型白血病にはBLVは関与しないと強く否定されてきた。しかし近年、日本全国で1歳未満から3歳の若齢ウシにおける白血病発症例が数多く報告されるようになり、BLVの関与が強く示唆されている。そこで本研究では、子牛型(若齢型)白血病がBLVに起因するものか、分子生物学的に解析し、その因果関係を検証することを目的とした。H24年度はまず、牛白血病発症牛由来の腫瘍組織の構成細胞同定のためのフローサイトメトリー法による迅速診断法を確立した。また腫瘍細胞より細胞を精製し、培養することでBLVが発現されるか否かをフローサイトメトリー法を用いてBLV-gp51抗原の検出にて評価した。全腫瘍検体についてはPCR法によるBLV遺伝子の検出も同時に行った。
1: 当初の計画以上に進展している
H24年度は共同研究機関の協力を得て、リンパ節腫脹や白血病を呈した牛白血病発症疑いウシ22頭の解析を行った。品種はホルスタイン種、黒毛和種および交雑種(F1)、年齢は16ヶ月齢(1歳4ヶ月齢)から104ヶ月齢(8歳8ヶ月齢)について解析を行った。腫瘍形成部位については、好発部位などの傾向が認められず、第四胃、体表などの全身リンパ節、腸骨下などの内蔵リンパ節など多部位に認められた。22頭中1頭は、フローサイトメトリー法による解析の結果、牛白血病が否定された。牛白血病と診断された21頭のうち20頭からPCR法によってBLVが検出された。白血病発症牛を種別に分類すると21頭中5頭がホルスタイン種、16頭が黒毛和種または交雑種であった。CD5陽性IgM陽性B細胞によって腫瘍が構成されていた症例からはBLV抗原も検出され20頭中5頭は典型的な地方病型牛白血病と診断された。5頭中3頭は老齢牛(104ヶ月齢など)または成牛(46ヶ月齢)であったが、2頭は28ヶ月と比較的若齢での地方病型牛白血病発症が今回の調査で確認された。一方、BLVが陰性だった1頭を含む3頭については、腫瘍はCD4陽性T細胞などにより構成されており、BLV感染牛における偶発的な子牛型白血病発症と考えられた。残りの16頭はすべてBLVに感染していたものの腫瘍構成はCD5陽性IgM陰性細胞やT細胞とB細胞の混在型など雑多な細胞集団によって構成されていることが初めて明らかとなった。
H24年度の調査結果から、BLVと無関係な子牛型白血病と診断されていた若齢での牛白血病発症牛のほとんどにおいてBLVの感染が認められ、B細胞の腫瘍を呈している個体が多く認められた。しかし従来のCD5陽性B細胞の腫瘍疾患である地方病型とは異なる腫瘍形成を呈しBLVとの因果関係は不明である。今後、症例数を増やし解析を進めるとともに腫瘍におけるウイルス量やクローナリティーについて検討していきたい。
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