研究課題
H25年度は共同研究機関の協力を得て、リンパ節腫脹や白血病を呈した牛白血病発症疑いウシ14頭の解析を行った。牛白血病ウイルス(BLV)はB細胞に感染すると、宿主ゲノムにプロウイルスとして組み込まれるが、感染牛のリンパ球や血清中にBLV抗原はほとんど検出されない。そこで、BLV感染B細胞のより詳細な性状を解析した。その結果、病態の進行に伴い増加するIgM高発現B細胞は、プロウイルス量では差が観られなかったが、IgM低発現 B細胞よりもBLV抗原を発現しやすい細胞群であることが示された。さらに、IgM高発現B細胞とIgM低発現B細胞の機能解析及びマイクロアレイによる発現遺伝子の網羅的解析を行った結果、IgM低発現B細胞では、T細胞性免疫を抑制するPD-L1、ウイルス由来癌遺伝子Tax/Rex mRNAや前癌遺伝子の発現が高いことが判明した。また、BLV感染牛由来B細胞リンパ腫での主要な細胞群は、IgM低発現またはIgM陰性B細胞であり、IgM高発現B細胞はほとんど存在しなかった。H24年度からの調査により、若齢での牛白血病発症牛のほとんどにBLVの感染が認められ、B細胞の腫瘍を呈している個体が多く認められた。しかし従来のCD5陽性B細胞の腫瘍疾患である地方病型とは異なり腫瘍形成を呈しBLVとの因果関係は不明である。本研究により、免疫抑制因子がBLV感染症に起因する免疫抑制及び病態進行に関与していることが示され、さらにBLVの体内伝播機構や牛白血病発症機構におけるIgM高発現B細胞群やIgM低発現B細胞群の役割が明らかとなった。
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