研究課題/領域番号 |
24658243
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
村田 幸久 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (40422365)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 血管内皮細胞 / 細胞膜断片 / 炎症 / プロスタグランジン |
研究概要 |
本提案では、血管内皮細胞が産生する細胞膜断片(ミクロパーティクル)がプロスタグランジン(PG)を産生することで炎症を制御していると仮説立て、その証明と病態治療への応用を目指し、研究を遂行している。平成24年度は、血管内皮細胞から産生されるミクロパーティクル内にPG産生複合体が存在して、機能しているか否かについて検討を進めた。得られた結果を以下に記述する。 ① ブラジキニンやカルシウムイオノフォアといった細胞内カルシウム上昇を引き起こす刺激や、TNF-alphaやIL-1betaといった炎症性サイトカインによる刺激が、単離内皮細胞から直径50-100 nmのミクロパーティクルを産生することが分かった。 ② 上記刺激を加えて単離してきたミクロパーティクルを、無刺激状態の血管内皮細胞に処置し、引き起こされる炎症反応を評価した。その結果ミクロパーティクルの投与は、内皮細胞において、接着分子であるVCAM-1やICAM-1、E-selectinのmRNA発現量を上昇させた。またこの反応には転写調節因子であるNF-kBの核内移行が伴っていた。 ③ 各刺激で産生、単離したミクロパーティクル内にはPG産生複合体(シクロオキシゲナーゼやPG合成酵素)が存在していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度の実験計画として当初予定していた、血管内皮由来のミクロパーティクルの①産生刺激探索、②炎症に及ぼす影響検討(in vitro細胞レベル)、③PG産生複合体の存在を明らかにすることができた。一方で、④in vivo個体レベルにおいて、血管内皮由来ミクロパーティクルが炎症に及ぼす影響の検討については、明確な結論を得るに至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は“血管内皮ミクロパーティクルによる炎症制御機構を明らかにして、病態治療へ応用すること”を目的とする。平成25年度は、24年度で得た結果をさらに精査するとともに、血管内皮ミクロパーティクルの炎症性疾患への治療応用について検討していく。具体的な項目を以下に挙げる。 ①ブラジキニンやTNF-alphaといった刺激の他に、生理活性脂質であるスフィンゴシン1リン酸(S1P)、菌体成分LPS、さらにPGE2による刺激が血管内皮由来ミクロパーティクルの放出を促すかどうかを明らかにする。 ②細胞膜をビオチン標識した血管内皮由来ミクロパーティクルをマウスに静脈注射し、生体内(血中)におけるその安定性や接着部位、代謝についてFACSと病理学的解析法を用いて検討する。 ③血管内皮由来ミクロパーティクル内においてPG産生複合体(シクロオキシゲナーゼ・PG合成酵素・細胞膜構造タンパク質Caveolin)が存在していることが分かっている。今後、免疫沈降法を用いて、これら各々の機能結合の有無を検討する。 ④in vivoレベルでEC-MPの機能を検証する。血中へのEC-MPの投与が、マウスの正常肺の機能にどのような影響(炎症反応)を与えるか検証する。このデータを基に、含有するPG合成酵素種を選択して炎症抑制と促進のそれぞれの作用を持つEC-MPを作成に挑戦する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究の遂行に必要な大型機器はほぼすべて揃っており、既に使用している状況にある。平成25年度は実験に用いる試薬や抗体、実験動物の飼育管理費用と言った消耗品費と、成果発表に関わる学会参加費、旅費、論文投稿や出版に関わるに費用に研究費を使う。
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