研究実績の概要 |
本研究では、ニワトリの配偶子形成と生殖系列幹細胞に特異的に発現する遺伝子の転写開始点上流域のDNAメチル化の関係を解明することを目的として実施されたものである。これまでの研究成果として、生殖細胞に特異的に発現する3遺伝子(Ddx4, Dnd1, Dazl)の転写開始点上流域のメチル化状態が肝臓に比べると低メチル化であること(24年度)、未分化細胞で発現が見られる遺伝子(Nanog)は精子では低メチル化であるが、肝臓では高メチル化であること(25年度)を明らかにしてきた。しかし、生殖細胞にとって重要な遺伝子ではないAlbは高度にメチル化されていることが示された(25年度)。これらの知見から考えられることは、受精後の雄性前核期後に起きるクロマチンの再構成と胚性遺伝子の活性化のためには、Nanogの遺伝子発現の準備が出来上がっていることである。しかし対照として調査したAlb遺伝子がメチル化されていることから、生殖細胞のメチル化環境を明らかにするためにメチル化酵素(Dnmt1, Dnmt3a, Dnmt3b)の発現をRT-PCRにより解析した。標準遺伝子としてGapdhの発現を調べた。精子では、GapdhのmRNAは検出されたが、全てのメチル化酵素のmRNAは検出されなかった。一方、肝臓では、Dnmt3b以外のmRNAは検出された。以上の結果を総合すると、精子では遺伝子はメチル化される環境ではないと結論される。しかし、臓器特異的に発現する遺伝子(Alb)はメチル化されていることから、生殖細胞での“履歴”を表し、肝臓に分化されることによって特異的に脱メチル化が起こって遺伝子の発現が誘導されるものと示唆される。
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