研究課題/領域番号 |
24658249
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
汾陽 光盛 北里大学, 獣医学部, 教授 (00153007)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | アネキシンA5 / 不育症 / 血小板 / 凝固 / 抗リン脂質症候群 |
研究概要 |
カルシウム依存性リン脂質結合タンパク質であるアネキシンA5は、アポトーシス検出キットに用いられることで有名になったが、その本来の生理機能は不明のままである。申請者は最近、アネキシンA5ノックアウトマウスを調べ、アネキシンA5が無いと胎盤内に血栓が出来易くなり、胎児死の起こることを観察した。これは、ヒトの疾病につながるアネキシンA5の機能を初めて実証した結果である。この知見を発展させ新規の診断法、治療法開発につなげる生理学的研究が是非必要である。 アネキシンA5ノックアウトマウスの胎児胎盤を様々な染色法で調べ、junctional zoneの大血管に血小板血栓の形成されること、フィブリン析出は特に促進されていないことを明らかにした。ヘパリンの投与によって胎児数の減少が改善されることを明らかにしたことから、血小板凝集にフィブリンの存在が必要であることも確かめられた。従来、抗リン脂質症候群ではフィブリン血栓の過形成が想定されてきたので、ノックアウトマウスの結果は新たな研究の視点を提供するものである。母胎血中のアネキシンA5がどのような機序で血小板活性化を防いでいるのか、実験法を含めて検討を続けている。なお、ノックアウトマウスでの知見を2012年にScientific Reportsに報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、1)母体のアネキシンA5が如何にして胎盤内に移送されるのか、2)アネキシンA5の胎盤における膜修復機能の実態、3)凝固カスケードに対するアネキシンA5の作用機序を明らかにすることを当初計画で掲げた。1)については、子宮胎盤を広範囲に免疫染色し脱落膜からアネキシンA5の発現していることを確認した。2)胎盤内のアネキシンA5の分布を調べることで、母胎から供給されるアネキシンA5が広く血管内皮の表面を覆うことを明らかにした。3)当初、フィブリン析出カスケードの促進が起こっているという作業仮説で研究を始めたが、実はフィブリン析出に変化はなく、血小板活性化と凝集が血流を妨げていることが明らかになった。以上のごとく、当初の研究計画に概ね沿った成果を上げており、順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに得られた成果を進展させるとともに、アネキシンA5と血小板活性化の関連について特に解析を進める。ワイルドマウスとノックアウトマウスから血小板を分取し、その活性化過程と活性化に及ぼす外生的アネキシンA5の作用、血小板内のシグナルトランスダクションについて解析する。但し、これらは当初計画から派生した研究計画であり、実験法の確立や機器や試薬類の調達が新たに必要である。また計画調書に記載した国外研究者との情報交換も昨年は諸般の事情で出来なかったので、本年度の出来るだけ早い時期に行い、計画達成に寄与させたく考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品費で生じた繰越額110,547円のうち71,340円はすでに学会参加の旅費として支出している。残金の39,207円を次年度の消耗品費に充当して支出する。
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