研究課題/領域番号 |
24658250
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
中尾 暢宏 日本獣医生命科学大学, 応用生命科学部, 助教 (60377794)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | ニワトリ種卵 / 貯卵 / 発生停止 |
研究概要 |
多くの卵を産み就巣する鳥類は、抱卵時の危険性やエネルギー供給から種卵(受精卵)の数が揃うまで1日1個の卵を産み続け貯えたのち抱卵を行い同時期に孵化させている。孵卵場においては、雛の生産効率から種卵を集めて冷蔵貯蔵(貯卵)し、数が揃ったところで孵卵させている。この様に種卵は、適切な管理により胚の発生を停止、再開できる高度に分化した機構を備えているが、動物が多くの子孫を残すために獲得した貯卵時における種卵の保存機構は、よく分かっていない生命現象でその詳細な分子メカニズムは不明である。本研究では、ニワトリ種卵の発生停止と再開機構を明らかにするために、まずニワトリ種卵における胚の発生停止と再開がどの発生時期(ステージ)でまで人為的に可能であるのかを検討した。種卵は、孵卵開始日から21日目に孵化するが、孵卵開始2日目(ステージ12)には心臓は形成され拍動し始めることから、最もよい孵化率が維持できる15度、湿度75%で4日間貯卵した種卵を孵卵開始日から3日目(ステージ19)に孵化最適温度の37.5度に移した後、再度15度、湿度75%で24時間の冷蔵貯卵を行った。その後、再び37.5度で24時間孵卵させNile blue A生体染色と目視により胚の細胞死と生存を観察した結果、調べた全ての個体で生存した。さらにこれらの固体の孵卵日は、無処理の種卵に対して1日遅れて孵化した。すなわち1日間の発生の停止が可能となった。このことから、3日間(ステージ19)までは、発生停止と開始の人為的コントロールが出来る事が明らかになった。そこで、さらに孵卵開始3日目から9日目までの各種卵について上記と同様の条件で低温貯卵処理し発生停止と再開の検討を行ったところ、9日目(ステージ35)までの全てのステージで発生停止と再開の人為的コントロールが出来る事が明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実施の前に本研究を遂行する上で必要不可欠な設備備品の低温恒湿器の購入が2011年のタイ王国の洪水の影響を受け入手の目処が付かなくなり、類似性能を持つ低温恒湿器を特注で受注したため、研究開始の時期が遅れた。平成24年度は、1. 発生ステージにおける発生停止と再開ステージの同定、2. 発生停止と再開に関わる遺伝子のホールトランスクリトームによるシステム分子の解析(2は、平成24~25年度にわたり実施計画)の実施計画で1. 発生ステージにおける発生停止と再開ステージの同定を行ったところ、計画したステージにおける種卵の発生停止と再開の人為的コントロール可能なステージの同定が出来たが、それ以上に発生の進んだステージ(ステージ35まで)においても発生停止と再開の人為的コントロールが明らかになり、知見は得られたものの今後ステージ35以上の発生の進んだ種卵についても検討をする必要性が有るため。
|
今後の研究の推進方策 |
平成24年度計画の発生ステージ(ステージ19)以降も発生停止と再開の人為的コントロールが可能な知見が得られたため、平成24年度に明らかにしたステージ35以上の種卵について発生の停止と再開について検討を行う必要がある。この検討を踏まえた上で、2. 発生停止と再開に関わる遺伝子のホールトランスクリプトームによるシステム因子の解析と3. プロテオーム解析から明らかにする発生停止と再開おける修飾タンパク質の同定を実施する。2. の実施に関して、申請時以降に新たな次世代シークエンサーの登場もありその性能を検討したうえで使用機種を選択しホールトランスクリプトーム解析の研究を遂行する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究に必要不可欠な低温恒湿器の設置に時間を要したためと種卵の貯卵耐性能が実施計画以上に優れていることが明らかになったため、実施予定のホールトランスクリプトーム解析の遂行が出来なく当該助成金が生じた。 次年度の使用計画は、 1. ステージ35以上の種卵を用いて貯卵耐性能の検討を行い発生停止と再開の限界ステージを検討する。 2. 発生停止と再開に関わる遺伝子のホールトランスクリプトームによるシステム因子の解析を行う。発生停止と再開可能ステージの種卵を15度、湿度75%の低温条件下に移す。24時間の低温刺激を与えた後(Time-0h)、37.5度(孵卵温度)に加温し3時間(Time-3h)、6時間(Time-6)の孵卵温度刺激を与える。その後、15度、湿度75%の低温刺激を24時間(Time-30h)与える。低温および孵卵温度に移行した際のTime-0h、Time-3h、Time-6hおよびTime-30hの4ポイントの種卵からtotal RNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いて発生停止と再開に関わるシステム分子の同定を行う。 3. プロテオーム解析から明らかにする発生停止と再開おける修飾タンパク質の同定を実施する。発生停止と再開可能ステージの種卵を15度、湿度75%の低温条件下に移す。24時間の低温刺激後(Time-0h)、37.5度に0.5時間(Time-0.5h)、1時間(Time-1h)、2時間(Time-2h)、3時間(Time-3h)、6時間(Time-6h) 加温し、さらに24時間(Time-30h)の低温刺激を与えた7ポイントの孵卵温度刺激を与える。この7ポイントの種卵を用いて、二次元電気泳動装置により増減するタンパク質とリン酸化タンパク質について解析し発生停止と再開に関わる修飾タンパク質の同定を行う。
|