研究課題/領域番号 |
24658251
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研究機関 | 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
辻 尚利 独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構, 動物衛生研究所・細菌・寄生虫研究領域, 主任研究員 (70355171)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 獣医学 / 節足動物感染症 / マダニ / ヘモグロビン / ヘム |
研究概要 |
ヘムの供給を宿主ヘモグロビンの分解に依存するマダニには、中腸上皮の細胞質内に遊離したヘムを速やかに分解し、酸化ストレスによる悪影響を回避する細胞レベルの自衛反応が備わっていると考えられる。中腸上皮細胞におけるヘム追跡実験から、遊離ヘムはオルガネラの一種であるヘモゾームに蓄積され、吸血の進行とともに中腸内腔に排出されることが見出されている。本年度はヘモゾームの局在を明らかにするため、可視化解析を行った。成ダニ期の中腸上皮細胞を破砕し、遠心・回収したヘモゾーム含有ペレットを用いて、吸血過程におけるヘム含有量の量的変化及び構成蛋白質の質的変化を調べた。また、2次元電気泳動による蛋白分画を用いて、可視化解析や生化学解析ヘモゾームを認識する特異抗体を作製した。蛍光色素(ローダミンなど)で標識したヘモグロビン、グロビンを添加し、上皮細胞に標識蛋白を取り込ませ、吸血3日目の中腸を組織培養した。また、フタトゲチマダニの人工吸血系に応用して、in vivoで取り込ませたマダニ個体を得た。これらのサンプルから、経時的に固定した中腸標本あるいはマイクロダイセクションで分離した単一上皮細胞を、抗ヘモゾーム外膜蛋白抗体を用いて免疫染色を行い、時間的変化に伴うヘモゾームの局在を時間時に沿って解析した。さらに、電子顕微鏡を用いて、ヘモゾームの微細構造についても調べ、予備研究で得られている脂質2重膜の形成機序についても解析した。今後、有毒な遊離ヘムを無毒化する中腸に構築されたマダニ特有のヘム浄化の応答機構を明らかにし、ネットワーク機構内から現行殺マダニ剤に代わる新たな抗マダニ薬の標的分子を発掘する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中腸上皮細胞におけるヘム挙動の一端が明らかにできたことから、ヘム浄化の応答機構の解明に有力な知見を得たと言えるため。
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今後の研究の推進方策 |
ほぼ計画通りにすすんでいることから、当初の予定通り推進する予定である。ただし、成果に対して公表実績が少ない。原著論文等の作成にもっと努力する必要がある。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究課題の推進のため、次年度の研究費は、交付申請時の計画どおり使用する。
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