研究課題
ヘムの供給を宿主ヘモグロビンの分解に依存するマダニには、中腸上皮の細胞質内に遊離したヘムを速やかに分解し、酸化ストレスによる悪影響を回避する細胞レベルの自衛反応が備わっていると考えられる。中腸上皮細胞におけるヘム追跡実験から、遊離ヘムはオルガネラの一種であるヘモゾームに蓄積され、吸血の進行とともに中腸内腔に排出されることが見出されている。最終年度は、遊離ヘムを無毒化する中腸に構築されたマダニ特有のヘム浄化の応答機構の解明を実施した。１．ヘモゾーム形態制御の分子機構と生理機能の解明①マダニアレイ解析：飽血までのマダニを経時的に回収し、全RNAを抽出後、マダニアレイとのハイブリダイゼーション解析を行い、宿主吸血由来と人工吸血由来の成ダニを比較し、吸血開始から飽血時、産卵終了時における発現変動する遺伝子を時間軸に沿って網羅的に解析した。②ヘモゾームの膜構成蛋白質から標的分子の単離：２次元電気泳動によって、膜構成蛋白質を分離し、参画分子と親和性のあるスポットを切り出し内部アミノ酸配列決定によって、親和性分子を同定した。免疫沈降を実施し、さらに分子間相互作用解析装置（ビアコア）による定量解析を行った。③親和性の定量的解析：参画分子と遊離ヘムの結合強度をビアコアを用いて解析した。⑤可視化解析：ヘモゾーム抗体や参画分子の特異抗体による可視化技法を用いて参画分子の局在解析を行った。２．マルチノックダウンマダニの作出によるヘム浄化ネットワーク機構の解明①参画分子マルチノックダウンマダニにおけるヘム浄化能の解析：同定されたる参画分子群の中から複数の遺伝子を標的とするdsRNAを注入し、ヘム浄化に与える影響をマダニアレイによって発現量を計測した。②パスウエイ解析：上記アレイ解析結果の遺伝子発現の定量的解析をもとに浄化ネットワーク参画分子の変動と参画分子以外の中腸遺伝子群との相関を解析した。
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PLoS One
巻: 9(3) ページ: e90661
10.1371/journal.pone.0090661
