本研究を通して、リーシュマニア原虫に対するワクチン抗原になるための因子として、局在、発現量、アミノ酸組成が重要であることを明らかにした。また、これら因子を用いたin silico screeningにより数百の新規候補分子を同定した。これらの候補分子のうちこれまで約30についてはクローニングに成功しており、20以上について大腸菌組換え体の作製を完了している。感染マウス血清およびこれら組換え体を用いてELISAをおこなったところ、その多くが抗原性を有していることが明らかとなった。以上のことより、これらパラメータを用いたスクリーニングが従来の方法と比較してはるかに効率的な抗原探索に有用であることが示唆された。さらに、新規抗原のうち既知の抗原と比較して同等もしくはそれ以上の抗原性を示したLm10およびLm15に対する抗体を作成し、これらタンパクの性状解析を行った。両タンパクともに細胞質に局在しており、L. majorのみならずL. donovaniでも発現が確認された。次にこれら抗原の防御能について試験するため、Th1誘導型アジュバントGLA-SEとともにマウスに接種した後にL. majorによるチャレンジを行ったところ十分な防御能が得られなかった。しかしながら、陽性コントロールであるKSAC抗原群においても防御効果が得られなかったため、現在追試を行っている。
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