研究課題
ウシ乳房炎は病原性微生物が乳腺に侵入することによって引き起こされる急性および慢性感染症の一種であり畜産学的な対応はもとより公衆衛生学的にも早急な解決が望まれる疾患である。ウシ乳房炎の最新知見は「これまでの技術では対応できない難治性乳房炎の国内における急速な感染拡大」である。近年、抗生物質治療に極めて不応答な乳房炎の存在が顕在化している。その原因微生物は「マイコプラズマ:Mycoplasma」である。ウシ乳房炎では①劇症型で泌乳が停止する、②抗生物質への応答性が極めて低い、といった特徴がある。本研究では乳腺上皮細胞の培養系を用い、ウシ乳腺に対するマイコプラズマの病原性を評価するとともに、マイコプラズマに対し高い殺滅効果を発現するファージの探索技術について検討する。当該年度はバクテリオファージの効果およびそのメカニズムの解析に必要な乳腺上皮細胞の分離培養を行った。ウシ乳腺上皮細胞は乳汁産生細胞として認識されてきたが、近年の研究により、サイトカイン等の産生細胞であると同時にそれらの受容細胞であることも明らかになっている。このことは、乳腺組織に存在する免疫担当細胞との相互連絡についての可能性を示唆するものであり、乳腺免疫の特性を解明する上で重要である。本年度の成果として、①乳腺上皮細胞にマイコプラズマを監査させることによる各種サイトカインの誘導について検討しその詳細を明らかにした。②ウシ血液由来白血球を共培養し、乳腺組織のモデル構築について一定の成果を得た(来年度継続)。
2: おおむね順調に進展している
研究は大きな障害等もなく当初計画したとおりに遂行されている。
当該年度は前年度の継続課題として、バクテリオファージの効果およびそのメカニズムの解析に必要な乳腺上皮細胞と白血球の三次元培養系構築を行う。乳腺組織には乳腺上皮細胞と白血球で構成され、両者の緊密な連絡機構によって効果的な異物排除が行われている。本研究では先に構築した乳腺上皮細胞の培養系においてウシ血液由来白血球を共培養し、乳腺組織のモデル構築を図る。一連の研究は、より生体の乳腺組織により近い環境を構築することでファージの有効性を厳密に評価することを目的とするものである。
実験の進捗状況に応じて適宜、実験資材の購入を行っため。乳腺上皮細胞および白血球の培養に関わる試薬および遺伝子解析に関わる研究資材の購入
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件)
Veterinary Record
巻: 172 ページ: 172-172
Canadian Journal of Veterinary Research
巻: 77 ページ: 120-125