研究課題
ウイルスには感染臓器特異性が認められる。しかし,自然感染では,機械的障壁や宿主免疫応答によりウイルスが排除される。致死に至る臓器への感染が抑制されると,ウイルスの臓器特異性の解明は困難となる。本研究課題では、神経向性フラビウイルスの感染臓器特異性を解明することを目的として,脳実質へのウイルス感染について検討した。本年度は,ウエストナイルウイルス(WNV)の赤色蛍光蛋白質 (DsRed2) 遺伝子を発現するウイルス様粒子(RVPs)の作製方法について再検討した。RVPsの一般的な作製法は,in vitro 転写したWNVのレプリコンRNAと,その構造蛋白質発現ベクターをBHK-21細胞に供導入するものである。しかし,この方法は複雑でステップも多い。また、操作に熟練を要する。そこで,より迅速で簡便な方法の開発を試みた。まず,レプリコンRNAが持続的に自己複製しているBHK-21細胞を作製した。次に,この細胞にウイルスの構造蛋白質発現ベクターを導入する。この新法を用いたRVPsの産生量は,従来法と同等であった。さらに,作製したRVPsを用いて,培養脳スライスへの感染実験を行った。マウスの脳を摘出し,スライサー(WPI)を用いて200~400μm厚にスライスした。脳スライス標本は,作製後1日目にRVPsを感染させ,10%FBSを含むDMEM培地中で1~2週間培養した。感染後,経時的にDsRed2の発現を観察したところ、感染3日目よりDsRed2の発現が観察された。以上の結果、脳スライス培養を用いたRVPsの感染系が確立できた。しかし,本研究期間において,当初予定していた脳以外の臓器への感染実験と,フラビウイルス感染抵抗性Oasb1マウスを用いた評価について検討することができなかった。今後,本研究で開発した実験系を用いて,残された課題について詳細に検討していく予定である。
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J. Vorol. Methods.
巻: 195 ページ: 250-257
10.1016/j.jviromet.2013.10.002
京都産業大学総合学術研究所所報
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