平成25年度は、イヌの消化管内視鏡生検の標準化方法を東京大学以外の二次診療施設(JARMeC)で実施し、その病理診断とIgHおよびTCR遺伝子検査の一致率を調査した。その結果、高グレードリンパ腫については、病理診断とクローナリティ検査の一致率は高いものの、腸炎と判断されるものにクローナリティ陽性の症例や、低グレードリンパ腫と診断したものにクローナリティ陰性と判断されるものが少なからず認められた。この結果については小動物獣医臨床関係の国内学会に内容を公表した。一方東京大学では、クローナリティ検査の方法を従来の方法より改善し、キャピラリー電気泳動法に基づく方法に改め、再度一致率を検討した。その結果やはりリンパ球性の腸炎と判断される症例にTCRでクローナリティ陽性と判断される症例が少なからず存在することが明らかになった。これらの検討結果より、イヌのリンパ球性腸炎を背景に低グレードリンパ腫が続発する一連の疾患が存在するという仮説に至った。この病態はヒトのグルテン応答性腸症で想定されている。このため、今後イヌにおける類似の疾患が存在するか否かを中心に本病態を再検討することとした。今後は自己免疫疾患としての側面よりこれらのイヌの消化管疾患について検証を重ねる予定である。またこれらの病態を示すイヌでは形質細胞が多く浸潤するにもかかわらず糞便中、腸管内および末梢におけるIgAが低下することが明らかになり、この点については、別途すでに内容を公表し、学術論文へその概要を報告した。
|