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2012 年度 実施状況報告書

SR蛋白質の機能制御によるグルココルチコイド感受性回帰法の検討

研究課題

研究課題/領域番号 24658266
研究機関東京農工大学

研究代表者

田中 あかね  東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (80418673)

研究分担者 松田 彬  東京農工大学, 農学部, 助教 (90613969)
研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2014-03-31
キーワード薬剤反応性 / 免疫学 / アレルギー・喘息 / シグナル伝達 / 獣医学
研究概要

1.NF-κBの活性化とGRα/GRβ発現調節をつなぐSR蛋白質の解析として、Raji細胞およびJurkat細胞等のリンパ球系細胞において低分子阻害剤やsiRNAによるNF-κBの機能阻害を行ったところ、GRα/GRβ比が増加することがRT-PCR法およびウェスタンブロット法により示され、同時にグルココルチコイド感受性が回復することがMTT法およびBrdU取り込み試験にて確認した。さらに、SR蛋白質の中でも特にSRp30cの発現が減少していることが判明した。このことから、SR蛋白質の中でも特にSRp30cがリンパ球のGRα/GRβ発現調節において重要な役割を担っている可能性が考えられた。
2.SR蛋白質の機能阻害による免疫系細胞のグルココルチコイド感受性変化の解析として、
siRNAを用いてSRp30cのサイレンシングを行いGR発現を確認したところ、GRαの発現量が増加し、GRβの発現量が減少していることがわかった。また同時にグルココルチコイド感受性が回復していることも確認できた。さらに、SRp30cがGRプレmRNAに結合する配列を予想し、その配列に対するブロッキングオリゴヌクレオチドを多数設計して細胞に導入した。その結果、予想どおりにGRα/GRβ比が上昇し、グルココルチコイド感受性が回復することが明らかとなった。
3.病態モデルマウス(腫瘍性疾患)に関する基礎的検討として、上記ブロッキングオリゴヌクレオチドを恒常的に発現するRaji細胞を、遺伝子導入およびセルソーティングによって作成した。予備実験として、その細胞をCB17/Icr-Prkdcscidマウスに腹腔内接種したところ、通常のRaji細胞と同様に生着することが確認できた。接種されたマウスは腹水貯留を起こし、3~7週間のうちに死亡したことから、病態モデルマウスとして使用できることが明らかになった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

グルココルチコイド耐性が発現するメカニズムを見いだし、その解除のためのブロッキングオリゴヌクレオチドを設計、マウスを用いた試験で有効性を証明した。

今後の研究の推進方策

SRp30cに対するブロッキングオリゴについて、GRプレmRNAとSRp30cとの結合を本当に阻害できているかどうかを確認する必要があり、RNA免疫沈降法を用いて解析を行う予定である。さらに、病態モデルマウスに対しグルココルチコイド治療を行い、ブロッキングオリゴがin vivoでも効果を発揮するかどうかを検証していく。

次年度の研究費の使用計画

1.GR プレmRNA に特異的なブロッキングオリゴバリエーションを作成し、細胞株に導入してGRαおよびGRβの発現の変化を確認する。現在のところ、SR 蛋白質がGR プレmRNA のどの部分に結合するかは不明である。GRαとGRβのスプライシングを行うためには、両者
が分かれるエクソン9 周辺に結合することが不可欠であると予想される。したがって、GR のDNA エクソン9 に相当するプレmRNA の配列周辺に結合能を持つオリゴヌクレオチドを設計する予定である。また、SR 蛋白質はAGリッチな部分やAGGACモチーフを持つ部分に結合しやすいとの報告もあるため(RNA, 2007)、その配列を含むオリゴヌクレオチドバリエーションを作成し、その効果を検証する。
2.リンパ腫細胞にブロッキングオリゴ発現ベクターを導入し、免疫不全マウスの担がんモデルを作成してグルココルチコイド感受性改善効果をin vivo で判定する。具体的には、ブロッキングオリゴ発現ベクターを導入したリンパ腫細胞株を作成し、遺伝子導入した細胞株におけるSR 蛋白質活性やGRαあるいはβの発現比、デキサメサゾン反応性を確認し、細胞毒性がなくGR 比およびグルココルチコイド感受性のみを調節することを確認する。腫瘍性疾患のモデルマウスとしては、前年度に構築した実験系を使用し、ブロッキングオリゴ発現ベクターと空ベクターを導入したリンパ腫細胞を移植する。上記項目で作成した病態モデルマウスにグルココルチコイド(プレドニゾロンまたはデキサメサゾン)を投与し、ブロッキングオリゴの発現によるグルココルチコイドの感受性の改善(生存期間の延長など)が認められるかどうかを大規模前臨床試験で確認する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)

  • [雑誌論文] The Phosphoinositide 3-Kinase Pathway Is Crucial for the Growth of Canine Mast Cell Tumors.2013

    • 著者名/発表者名
      Amagai Y, Tanaka A, Matsuda A, Oida K, Jung K, Matsuda H.
    • 雑誌名

      Journal of Veterinary Medical Science

      巻: In press ページ: In press

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Stem cell factor contributes to tumorigenesis of mast cells via an autocrine/paracrine mechanism.2013

    • 著者名/発表者名
      Amagai Y, Tanaka A, Matsuda A, Jung K, Ohmori K, Matsuda H.
    • 雑誌名

      Journal of Leukocyte Biology

      巻: 93 ページ: 245-250

    • DOI

      doi: 10.1189/jlb.0512245

    • 査読あり
  • [学会発表] リンパ球のグルココルチコイド感受性におけるスプライシング制御因子の役割

    • 著者名/発表者名
      松田 彬、田中あかね、大森啓太郎、松田浩珍
    • 学会等名
      Conference of BioSignal and Medicine 2012
    • 発表場所
      和歌山県伊勢市・伊勢グランドホテル
  • [学会発表] Clinical and molecular biology of mast cell tumors

    • 著者名/発表者名
      Akane Tanaka
    • 学会等名
      60th anniversary symposium of Chonnam international University, Veterinary College
    • 発表場所
      韓国・全南大学
    • 招待講演
  • [図書] 肥満細胞腫における分子標的治療法の最近の知見(J-Vet)2012

    • 著者名/発表者名
      田中あかね、雨貝陽介、松田浩珍
    • 総ページ数
      8-16
    • 出版者
      インターズー
  • [備考] 研究室ホームページ

    • URL

      http://www.tuat.ac.jp/~mol_path/

  • [産業財産権] オリゴヌクレオチド、グルココルチコイド感受性増強剤、医薬組成物、及び発現ベクター2012

    • 発明者名
      田中あかね、松田浩珍、松田彬
    • 権利者名
      田中あかね、松田浩珍、松田彬
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      PCT/JP2012/078245
    • 出願年月日
      2012-10-31
    • 外国

URL: 

公開日: 2014-07-24  

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