研究課題
グルココルチコイド製剤は炎症性疾患・自己免疫性疾患・アレルギー疾患・腫瘍性疾患等に広く使用される重要な薬剤である。多くの症例ではグルココルチコイドの投与による抗炎症効果や免疫抑制効果、抗腫瘍効果が認められるが、耐性に陥り、有効な治療効果が得られない症例も多数存在する。他の免疫抑制剤や抗がん剤を用いる治療では、強い副作用の発現や高額の治療費などの問題点があるため、グルココルチコイド作用の増強あるいは耐性を解除する方法の開発が強く望まれている。本研究では、プレmRNAのスプライシング因子であるSR蛋白質の機能調節を介してグルココルチコイド受容体(GR)の発現を調節し、免疫系細胞や造血系腫瘍細胞におけるグルココルチコイド感受性の特異的な増強および耐性解除法確立のための基礎研究を実施した。具体的には、1)免疫系細胞におけるGRα、GRβの発現に関与するSR蛋白質(SRp30c)を同定した。2)リン酸化阻害剤やsiRNA等を用い、SR蛋白質の機能阻害を行い、免疫系細胞のグルココルチコイド感受性の変化を解析、SRp30cの機能を抑制することで機能的なGRであるGRαが増加しグルココルチコイド感受性が上昇した。3)GRプレmRNAに特異的なブロッキングオリゴを作成し、SRp30cのGRに対するスプライシング作用を特異的に阻害する配列を決定した。4)グルココルチコイドに耐性を示すヒトリンパ腫細胞にブロッキングオリゴ発現ベクターを導入し、免疫不全マウスの担がんモデルを作成してグルココルチコイド感受性改善効果をin vivoで判定した。ブロッキングオリゴ発現ベクターを導入したリンパ腫細胞を移植し、グルココルチコイドを投与すると腫瘍の増殖が抑制された。以上の結果より、SRp30cの機能をGR特異的に抑制することで、グルココルチコイド感受性が改善することが明らかとなった。
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