研究課題/領域番号 |
24658267
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
松田 浩珍 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (80145820)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | トランスレーショナルリサーチ / 動物 / 病理学 |
研究概要 |
NC/Tnd マウスを用いた妊娠の免疫学的機構の解析 アトピー性皮膚炎を発症したNC/Tnd マウスは繁殖が難しいが、その詳細は明らかになっていない。そこで、皮膚炎を発症していないSPF 及び皮膚炎を発症しているコンベンショナルNC/Tnd マウスに対し、同系統あるいは異系統のオスマウスを交配し妊娠を誘導した後、経時的に血液を採取し、抗体、補体、タンパク分解酵素、サイトカインについて解析を行った。また、妊娠から出産の各時期で、胎盤周囲の肥満細胞数が増減し、活性化されることが知られている。申請者は、肥満細胞を欠損するNC/Tnd-Wsh/Wsh マウスの作出に成功しているため、これを用いてアレルギー反応の重要な担い手である肥満細胞の妊娠や分娩への関与機構が解明している。まずメスの性周期によって子宮粘膜の肥満細胞が増減すること、あるいは活性化が誘導されていることを組織学的に明らかにした。特に同系等の交配よりも、異系統のオスとの高配により、より肥満細胞が活性化されることを見いだしている。さらに、妊娠の中期以降、血中の血小板活性化因子、補体系、およびトリプターゼが増加することが明らかにした。特に、血小板活性化因子や補体系の活性が高い個体で、分娩が正常に行われずに、死産や母体死を起こす確立が高くなっていることを見つけている。妊娠マウスの子宮の組織学的解析により、胎盤周辺に肥満細胞が増加すること、妊娠後期に脱顆粒する肥満細胞の数が増加することを見いだしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
繁殖が難しいNCマウスを用いた実験であるが、繁殖が順調に進み、組織学的解析は順調に進んでいる。血液採取により、妊娠マウスが死亡することが散発するが、それを加味して繁殖させる必要があり、その計画立てが難しいところとなっている。繁殖には年内変動があり、進まない時期があることから、計画通りに実験が出来ない時があった。しかしながら年間を通して考えると、おおむね順調に実験を進めることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度から開始した研究をさらに進展させると共に、得られた妊娠の維持機構における免疫システムに関する基礎データから、NC/Tnd マウスを用いて羊水塞栓症モデルの作成を行う。またモデルを利用してその病態制御法を検討することで、新しい治療法開発の基礎とする。
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次年度の研究費の使用計画 |
羊水塞栓症モデルの作成を行う。アトピー性皮膚炎・喘息・花粉症などのアレルギー患者では、Th2 型の免疫反応が優位な状態となっている。そのようなアレルギー体質の母親で羊水塞栓症のリスクが高くなっていることが報告されている。そこで、妊娠中の免疫状態を制御することで、羊水塞栓症のモデルを作出するとともに、致死的となる羊水塞栓症の発症を抑制する治療法の検討を行う。また、NC/Tnd-Wsh/Wshマウスを用いて、分娩時アナフィラキシー反応への肥満細胞の関与機構を明らかにする。具体的には、Th2 型免疫反応の誘導として、SPF 環境下で飼育したメスのNC/Tnd マウス及び標準マウスに対し、卵白アルブミンの接種により免疫を行い、IL-4 優位のTh2 型免疫反応を惹起、その後同系統あるいは異系統のオスと交配させて妊娠を誘導する。妊娠後も経時的に卵白アルブミンを接種して免疫状態を維持し、分娩直前に卵白アルブミンで刺激をして全身的に強い免疫反応(アナフィラキシー)を誘導、分娩や母体への影響を明らかにする。即ち、羊水塞栓症発症の有無を免疫病理学的検証する。さらに、アナフィラキシーの誘導に関しては、体温低下・心拍数低下・血中アナフィラトキシン濃度・血中血小板活性化因子(PAF)濃度などにより、評価する。
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