研究課題
NC/Tndマウスは、申請者によって世界に先駆け初めて報告されたアトピー性皮膚炎自然発症モデルマウスであるが、皮膚炎を伴うメスマウスの妊娠率が低く、時には周産期に死に至ることもあり、繁殖の難しいことを経験的に気付いていた。近年、ヒトにおいて妊娠~出産時期における生殖の破綻が、特に母子共に致死率の高い羊水塞栓症を誘導し、少子化も相まって社会問題化している。その発症にはアレルギーを含む何らか免疫異常の関与が示唆されているものの、その原因は未だ不明のままである。本研究では、NC/Tndマウスの妊娠時の免疫状態を分子生物学的に解析するとともに、本マウスの周産期における様々な因子の動態を解析することで、アレルギー性炎症と周産期疾患の関連性を検討した。周産期に母体が死亡、あるいは死産したNC/Tndマウスは、SPF環境で飼育し皮膚炎を発症しないNC/Tndマウスではきわめて少ないが、空気清浄を行っていないコンベンショナル環境で飼育し皮膚炎を発症しているNC/Tndマウスでは10%程度にまで上昇した。死亡したマウスを解剖すると、脳や肺に出血性梗塞病変が認められた。また、血清中の血小板活性化因子を測定したところ、妊娠の時期に関わらずNC/TndマウスではBALB/cマウスに比べて高くなっていた。補体の中でもアナフィラキシーの原因となるC3の血清中濃度を測定すると、BALB/cマウスと比較してNC/Tndマウスで高値であったが、妊娠が進むにつれてやや減少し、出産後には元のレベルに戻った。補体の中でも膜侵襲複合体の要となるC5の血清中濃度は、NC/TndマウスではBALB/cマウスと比較して低く、妊娠中にはさらに低下した。これらの結果より、NC/Tndマウスの血小板は活性化しやすい状態にり、妊娠中の血清C3およびC5値のアンバランスは、末梢組織への分布や異常な消費を示唆している。
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http://www.tuat.ac.jp/~mol_path/