研究課題
本研究は、ヒトと共通の疾病が自然発症するイヌに着眼し、ヒト再生医療の実用化を円滑に進め得るトランスレーショナルリサーチの一つとして、イヌiPS細胞から効率的に血液系細胞を作製することを目的としている。本研究年度では、成犬体細胞から未分化状態および分化誘導効率の高いiPS細胞の作製について検討した。また既に樹立しているネコiPS細胞から赤血球系造血前駆細胞への分化誘導について検討し、以下の結果を得た。1.成犬皮膚線維芽細胞にレンチウイルスを用いてヒト由来の4つの多能性関連転写遺伝子(OCT3/4、 SOX2、KLF4およびC-MYC)を導入し、ヒト白血病阻害因子と骨形成蛋白質4を添加した培地で培養した結果、iPS様細胞コロニーを得た。この細胞コロニーは、ヒトやマウスで報告されているiPS細胞と同様に、高い核/細胞質比を示したが、継代することができなかった。またMAP kinase 阻害剤とglycogen synthase kinase-3β阻害剤を添加した培地でイヌiPS細胞の作製を試みたが、細胞コロニーを得ることはできなかった。2.ネコ胎子線維芽細胞由来iPS細胞を用いて、浮遊培養で胚様体を形成させた後、血液分化培地に幹細胞成長因子などの造血系への分化を誘導する各種サイトカインを添加して20~30日間培養することにより、赤血球系造血前駆様細胞を得た。本細胞はメチルセルロース培地で赤血球系コロニー形成の有無を確認した結果、形態的にマクロファージ系細胞と赤芽球系細胞への分化を確認できた。今回の結果から、未分化状態および分化誘導効率の高いイヌiPS細胞の作製には、塩基性線維芽細胞増殖因子等の他の添加因子を培地組成に組み合わせて、ネコiPS細胞の分化誘導実験結果をイヌiPS細胞に反映させていきたい。
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