研究課題/領域番号 |
24658275
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
栗原 達夫 京都大学, 化学研究所, 教授 (70243087)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 酵素 / 応用微生物 / 有機ハロゲン化合物 / フルオロ酢酸 / デハロゲナーゼ |
研究概要 |
Burkholderia sp. FA1 由来のフルオロ酢酸デハロゲナーゼが触媒する反応では Asp104 が基質のα-炭素を求核攻撃することで、ハライドイオンが脱離すると共に酵素と基質が共有結合したエステル中間体が生成し、これが His271 により活性化された水分子によって加水分解されることでグリコール酸が生成すると共に酵素が再生する。His271 を Ala に改変した H271A 変異型酵素を用いることで、エステル中間体が加水分解されずに反応が止まった状態の結晶構造を捉えることに成功した。結晶構造からも本酵素反応がエステル中間体を経由することが示された。一方、Asp104 を Ala に改変した D104A 変異型酵素を用いることで、フルオロ酢酸が活性部位に取り込まれた状態のミカエリス複合体の結晶構造を捉えることに成功した。他の細菌由来のフルオロ酢酸デハロゲナーゼ RPA1163 の D110N 変異型酵素とフルオロ酢酸の複合体結晶構造と比較したところ、両酵素の活性部位におけるフルオロ酢酸の結合様式が互いに異なることが明らかとなり、基質の結合様式が二通りあることが示唆された。本酵素にフルオロ酢酸またはクロロ酢酸を添加したときのトリプトファン残基の蛍光スペクトルを比較解析した結果、これらの基質の酵素への結合様式が互いに異なることが示唆された。フルオロ酢酸の脱フッ素反応の quantum mechanical/molecular mechanical 解析からは、フルオロ酢酸のフッ素原子が His149、Trp150、Tyr212 から形成されるハロゲン結合サイトに収容されて脱フッ素反応が進行するものと考えられた。フッ素原子と His149、Trp150、Tyr212 の水素結合による相互作用が脱フッ素反応の活性化エネルギーの低減に大きく寄与していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的としてあげていた、フルオロ酢酸の炭素-フッ素結合の切断を触媒するフルオロ酢酸デハロゲナーゼの精密反応機構の解明に関しては計画以上の進展があったが、もう一つの目的としてあげていた不飽和脂肪族有機ハロゲン化合物の酵素的脱ハロゲン反応機構の解明に関しては、関与する酵素の特性は明らかにできたものの、反応機構の解明に関しては今後の課題として残されている。以上の状況から、全体として「おおむね順調に進展している」と評価するのが妥当と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究はおおむね順調に進展しているため、現時点では、当初の計画を大きく見直すことは考えていない。すでに取得している酵素については詳細な構造・機能解析を行うとともに、その知見に基づく機能改変を試み、一方で新規酵素のスクリーニングを継続して行う。これらの研究により、環境修復等に有用な酵素を開発する。
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次年度の研究費の使用計画 |
不飽和脂肪族有機ハロゲン化合物の脱ハロゲン反応を触媒する酵素の立体構造解析とそれに基づく反応機構解析を重点的に行うことにしており、次年度の研究費は、その解析に必要な消耗品、および実験を加速させるための実験補助者への謝金を主な使途とする計画である。
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