研究課題/領域番号 |
24658276
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
山岸 主門 島根大学, 生物資源科学部, 准教授 (00284026)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 環境民俗学 |
研究概要 |
子どもたちには、自然の力を体で受け止めながら、自ら育つ「力」がある。土いじりや遊びを通して、自然やモノに働きかけ、感得する力を「遊力」とし、作物や家畜を育てる中で、いのちの大切さを感じ、自分も育てられる力を「農力」とした。本科研では、子どもたちの「遊力」と「農力」を育むために、①適切なフィールドとして「畑のある冒険遊び場」をまず設置し、つぎに、②大人の私たちが、どのように関わっていくことが、子どもたちの「遊力」と「農力」を豊かに引き出すことができるのか評価するためのものさしをつくり、さらに、③地域全体で持続的な教育と農業を推進していくためのまちづくりのあり方について考えることを目的とした。 平成24年度は上記①と②に注目した。 ①研究計画に示した8つの候補地の内、すべての場所で遊び場を設置し、そのうち5カ所(島根大学附属幼稚園、川津幼稚園、島根大学松江キャンパス、島根大学本庄農場、持田公民館)に畑を作ることができた。 ②幼児が「遊力」を育む中で五感を使って楽しく「農力」を感じられるような活動を促すため、遊びで使用した竹を一部チップ状にしてカブトムシ幼虫の棲み処や餌に利用し、さらに幼虫の糞を園庭の畑に投入し、その作物を収穫して食べるといった食農教育活動を実施した。調査は主に参加観察法を用い、適宜、身体活動量や幼児が描いた絵の分析、そして担任・保護者など第三者からのインタビューを行った。その結果、戸外での自然物を使った遊びは身体活動量を高め、五感への働きかけを促し、園庭での遊びの幅が広がった。幼児が全体としての大きな「循環」を理解するのは難しいが、「遊んだ竹がカブトムシの家になる」「幼虫の糞が作物の栄養になる」など一つ一つの繋がりは理解していることが分かった。幼児が自然に親しみ触れ合う中で、物質・生命の循環をより身近なものとして捉え、様々な事象に興味や関心を持つ様子が伺えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
24年度の目標は『「遊力」と「農力」をともに育むための冒険遊び場と栽培畑の適切なレイアウト』であった。まず大学近隣に計8カ所の遊び場を設置することができた。その中に畑を5カ所整備できた。ポイントは以下の4つである。 □アクセスの多様性:「畑に行こう!」と気負わなくても、遊びの動線の中に上手に畑を配置し、自然に畑の中で過ごせるように工夫した。 □空間の多様性:単作ではなく、数種類の作物を混作・間作栽培えきた。 □時間の多様性:連作ではなく、輪作を基本とした。 □作物・品種の多様性:多くの作物・品種を取り入れ、在来種も導入した。自家採種については、25年度に取り組む予定である。
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今後の研究の推進方策 |
『「遊力」と「農力」を適切に評価するためのものさしづくり』を目指す。遊具とは投入資材の地産地消に配慮した上で、遊び場に来園した幼児・児童の体力等を計測し、その子ども達の遊び方・遊びの内容等の観察記録と比較する。とくに身体加速度計の装着と参与観察を併行して子どもたちの動きをモニターする計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度に調査予定の身体加速度を計測するための装置が、平成25年夏頃にマイナーチェンジするとの情報を得たので、それを平成25年度に購入するため若干、繰越研究費を生じることとした。その他、平成25年度の研究費の主な使用計画は以下の通りである。 □幼児・児童の体力;「体力評価システム」を購入し、握力、ジャンプ力、体支持時間、長座体前屈等を計測。 □足指筋力;「足指筋力測定器」を購入し、足指筋力を計測。 □行動観察;参加観察等で取得したデータを分析するために共分散構造分析ソフトとテキストマイニングソフトを購入する。
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