研究課題/領域番号 |
24658276
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
山岸 主門 島根大学, 生物資源科学部, 准教授 (00284026)
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キーワード | 冒険遊び場 / プレーパーク / 子ども / 外遊び / 食農教育 / 農作業体験 / 身体活動量 / 竹 |
研究概要 |
一年目のH24年度には、遊びに利用した竹を餌に産出されたカブトムシ幼虫の糞を畑に投入することで、「遊び」と「農」の連結を試行した。しかし、子どもが自主的に野外や畑に出て活動するような動機付けは不十分で、その評価、特に身体に与える効果の検証が十分ではなかった。そこでH25年度は自然物を利用した外遊びや農作業体験を通じて子どもが野外活動を積極的に行えるようなきっかけ作りを目指すとともに、それらの活動が身体活動へ与える影響を調べた。 調査は幼児から児童を対象とし、松江市内の複数の幼稚園、小学校、島根大学公開講座及びプレーパークで外遊びと農作業体験の参与観察を実施し、身体活動量の計測も行った。 各活動で身体活動量を計測すると、野外での遊びである竹のアスレチックは5.0METsで最も値が高く、最も低かったのはサツマイモ苗の植付けで安静時と同程度の0.8METsであった。 アンケートの結果、活動中の子どもの身体活動と「楽しい」という感情との間に中位の正の相関が認められ、特に竹のアスレチックでは有意に正の相関が認められた。 サツマイモ畑の除草作業中、混在した数種イネ科雑草に気付いた児童らに誰が多く草を見つけ、集めることができるか競争することを提案した結果、雑草の見分けがつくようになり好奇心が刺激され、身体活動も促された。また、ブルーベリー収穫では摘取り体験を複数回経験したことで作業に自信が付き、二回目に身体活動が増加した事例が観察された。 同じ野外活動でも農作業や遊びの種類に応じて身体活動量も異なり、複数の活動を組合わせることで子どもの身体活動は多様に変化すると考えられる。外遊びや農作業体験の活動中、「楽しさ」を付加することで子どもは活動に積極的になり、身体活動も促されることが推測される。身体活動を促すきっかけとして観察者の適切な声かけや子どもの経験、自信の有無が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目は『「遊力」と「農力」をともに育むための冒険遊び場と栽培畑の適切なレイアウト』、2年目は『「遊力」と「農力」を適切に評価するためのものさしづくり』が計画であったが、1年目にレイアウトした遊び場&畑のなかで、2年目は量的(身体活動量)および質的(アンケート、インタビュー等)調査により、概ね目的を達成できた。
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今後の研究の推進方策 |
3年目は、『「遊力」と「農力」を育むまちづくり』『子どもの居場所・農的活動の場づくりからまちづくりへ』がテーマである。遊び場・農的活動の場を基軸にして、大人やティーンズ、障がい者の居場所づくりや乳幼児家庭の子育て援助、災害・犯罪に強い地域づくりなど地域全体で多角的なまちづくりを目指す。実際には、子ども育成協議会を中心に、大学、小学校、公民館、市教育委員会(小中一貫教育)、社会福祉協議会の連携を図って構築していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
プレーパークや生涯教育の専門家である香川大学の清國祐二教授を訪ねて研究打合せや近隣の栗林プレーパークの視察をH25年度末に実施する予定だったが、先方とのスケジュールが合わなかったため。 地域づくりとプレーパーク(たごっこパーク)・子どもの居場所作りに取り組むNPO法人「ゆめ・まち・ねっと」(静岡県富士市)を訪問し、遊び場の参与観察と聞き取り調査を行う予定である。
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