研究課題/領域番号 |
24658277
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
日鷹 一雅 愛媛大学, 農学部, 准教授 (00222240)
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研究分担者 |
永野 昌博 大分大学, 教育福祉科学部, 講師 (50530755)
中井 克樹 滋賀県立琵琶湖博物館, 滋賀県立琵琶湖博物館, 研究員 (80222157)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 外来種 / 水田 / スクミリンゴガイ / IPM / 生物多様性 / 総合的外来種駆除 / 個体群動態 / 農薬影響評価 |
研究概要 |
侵入生物の分布拡大を阻止し地域的根絶を達成するためには、まず地域個体群の分布やその動態の状況について詳細に調べる必要がある。そこで第1段階段階として、侵入生物種であるスクミリンゴガイ個体群の分布状況について、近年分布を拡大した地域、愛媛県、大分県、滋賀県などにおいて景観レベルの調査を行った。愛媛県では、平野部の多くに分布が拡大しており、一部の地域では流域の上流の水田地帯への侵入が確認できた。大分県の調査でも同様であったが、愛媛県に比べて分布の拡大は平野部が主であり、流域上流の山間部水田への侵入はごく一部の人為的移植水田を除き認められなかった。滋賀県では琵琶湖沿岸域の水田地帯と内湖、湖内で分布が拡大しており、琵琶湖大橋南岸全体に分布が拡大しているが、上流域への水田地帯への侵入は今のところ認められなかった。以上のような分布状況において、これ以上の分布拡大を阻止するための防除ストラテジとしては、上流から下流方向への分布の進展を妨げるための方策を講じる必要性が示唆された。 総合的な防除法の検討については、最近登録されたスクミノンを用いた薬剤防除の効果が大きいことが圃場試験で明らかとなり、移動阻止、人為的除去と天敵防除、耕種的な防除法などの組み合わせによる局所的根絶の可能性が考えられた。スクミノンのスクミリンゴガイに対する殺貝効果は長期残効的であり、様々な施用方法の発展が期待できるところであるが、その一方で他の生物種への悪影響も懸念される。今回、水田内局所的施用を試験した防除試験圃場では、スクミノン施用後の綿密な影響評価を直接観察により実施したが、肉眼レベルではスクミリンゴガイ以外の生物種を殺傷するような現象は特に見出せなかった。また隣接したスクミノン無施用水田における田面水中の水生生物相に大きな差異は認めれなかった。 薬剤を環境に配慮し有効に用い、地域的根絶の推進上、有望である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画初年度は、スクミリンゴガイの分布を景観レベルで明らかにすることであったが、愛媛、大分、滋賀の各試験地でおおよその分布とその拡大の様相が明らかにされた。 このような詳細な分布情報を収集した事例は少なく、貴重なデータベースが作られている。 また駆除法の選定と効果においては、新規に登録され現場における情報量の少ない農薬の選択毒性、効果の持続性、施用方法の工夫、生物多様性への影響について、今後に有益な情報を得ることができた。とくに新規薬剤のスクミノンについて、水田施用後の詳細な動態について、水田生物と関連付けながら観察した事例は従来なかった。 以上の知見から、この薬剤を中心にした環境配慮型の総合的な根絶は、ニーズのある地域を限定すれば可能になる道が開けたと考えている。松山の2地域で実施したアンケート調査でも若年層までがこの外来種を認知、不快感を表しているのは大きな社会的駆除圧になると考えられる。 また具体的な防除法の組み合わせる上で、スクミノンを基幹駆除法に据える目処がつき、地域を限定できさえすれば総合的根絶のロードマップつくりに一歩近づくことができたと判断できると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
さらに本外来種の分布の情報をモニタリングしながら、その詳細な個体群の分布拡大の機序の実態を明らかにする。本種については、一度水田に侵入した場合に越冬定着が可能なことが知られている。実際の分布の拡大が、水系を流下するのか、遡上するのか、あるいは何らかによる人為的なものなかのかについては明らかにされていないので、今後の調査・解析の進展により、分布拡大の実態が明らかにされるであろう。とくに新規に侵入定着した小地域における本種個体群の挙動について明らかにしたいと考えている。また分布調査とともに、地域の本外来種に対する意識調査を継続し、社会的な駆除圧の動機付けに結び付けていきたく考えている。 総合的な駆除法を無理なく組み立てていくためには、各種の駆除法が無理なく相乗効果をあげ、スクミリンゴガイ個体群を有効に抑圧、ゆくゆくは地域根絶を達成することできる。まず、水田における繁殖期にスクミノンを使える場合には、徹底的で環境に配慮した薬剤施用法の工夫が求められる。今回試験した局所的施用法は、前面散布に比べ効果が長期に続き、水田内個体群の増殖を大きく食い止める可能性が示唆できた。さらに、生物多様性の構造のことなる3地域で、スクミノンを中心とした総合的駆除法の可能性を個別に検討し、より現実的に柔軟な適応的なストラテジに発展させていきたい。そのためには、この新規登録された農薬スクミノンの各地域の多様な水田生物相に対する影響評価について今後推進する必要がある。また水田ではスクミノン以外に苗箱剤のような殺虫剤も用いられており、その影響も想定した研究を展開していきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
学会発表・研究打合せを行うための旅費として既に執行済み。経理処理上残高が発生したもの。
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