研究課題/領域番号 |
24658277
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
日鷹 一雅 愛媛大学, 農学部, 准教授 (00222240)
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研究分担者 |
永野 昌博 大分大学, 教育福祉科学部, 准教授 (50530755)
中井 克樹 滋賀県立琵琶湖博物館, 研究部生態系研究領域, 専門学芸員 (80222157)
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キーワード | 外来種 / スクミリンゴガイ / 水田生物多様性 / 外来種駆除 / メタアルデヒド / 椿油かす / 根絶 / IPM |
研究概要 |
スクミリンゴガイ(一部地域はラプラタリンゴガイ)は、西南暖地を中心に分布をますます拡大しており、水稲作に甚大な被害をもたらし、生物多様性や生態系への攪乱が問題視されている。WWFの世界三大侵入外来種のひとつに挙げられ、今や世界中で問題視される外来生物になった。中国四国地方の松山を中心とした瀬戸内沿岸地域、九州の大分市周辺、近畿の琵琶湖南部といった侵入、定着、分布拡大の進展が著しい地域で、本外来種個体群の分布調査を景観的に進めた。また、本種の個体群を総合的に駆除し管理するための方策について、先進的な防除現場から情報を収集しながら、IPMの組み立てについて調査し、地域的根絶のための多様な防除手段の発掘と生物多様性や環境に配慮した防除大系の組み合わせについて試行錯誤を行った。以下が主要な成果である。 1)愛媛、大分、滋賀、さらに今回あらたに広島、岡山、鹿児島を加えたが、これらの 発生地域では、平野部の低湿地の水田地帯だけでなく、標高の高い上流部にもパッチ状の飛び火的な分布が確認され、下流域の拡大汚染の恐れが想定された。特に水生生物群集への攪乱が心配された。 2)防除法は、ベイト剤のメタアルデヒドが現場の多くで使われていた。愛媛などの一部の地域では、魚毒性の高い椿油かすが普及していた。メタアルデヒドは他の生物種へに悪影響は現在までに目立ってなかった。この薬剤は水田の初期にしか使用できない制限があるため、この薬剤だけで局所個体群であっても根絶は難しい。新たに収穫前45日前まで使用できる新規薬剤もあるが、スクミリンゴガイの行動を麻痺させるだけで、大きな密度低下は期待できない。椿油かすを含め、密度が低い場合は効果が高いが、どれも根絶を実現するには化学的手法だけでは限界があると考えられた。 3)他の生物的、物理的駆除法も更に検討し、低密度、局所分布個体群を対象に根絶の可能性を検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
社会的に本種の外来種としても問題が大きく取り上げられた。とくに水稲被害は甚大で、省力栽培の直播栽培の大きな阻害要因に本種はあげられていた。直播栽培には生物多様性を増進させる場合(Watanabe et al, 2013)もあるので、本外来種の分布拡大は水田生物多様性の保全にとって障害になりつつある地域もある。また、今回、本外来種が生息する水田にも、絶滅危惧の水生昆虫が多く生息していることが新たに判明し(渡部・日鷹 2013)、悪影響が懸念された。この研究期間に丁度、化学的な防除法が開発、普及し始めたので、防除法を調査研究し、総合的に組み立てていくことを進めることができた。以上の理由からおおむね計画どおりに進展してきている。
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今後の研究の推進方策 |
2カ年の新規防除法の効果と生物多様性などへの環境リスクについて、さらに定量的に評価しながら、目標である局所的な地域で容易に根絶可能な総合的駆除管理手法のロードマップを作成する。地域のよって本外来種のもたらす障害は水稲栽培上の有害性のみならず、生物多様性や生態系への直接的、間接的な障害も想定されることから、多様な地域の現場に適応的に対処できる根絶マネジメントも視野に入れた推進を考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
現場で化学的防除が普及し、こちらが薬剤を購入して駆除試験する現場の地域数が減った分、経費を節減できたこと、さらに広範囲の分布調査から、景観的に根絶が可能な地域が限定されており、防除試験のトライアル事例が減ったため。 さらに本種が分布拡大し、生態系、生物多様性の攪乱で問題を起こすリスクの高い地域、鹿児島県とその南西諸島や北陸地方の新規進入地でも局所的根絶駆除の方策を組み立てるために主に旅費として残した。スクミリンゴガイの新規侵入地域では、これまでの地域とは違う水田の生態系、生物多様性の保全の新たな障害を生じつつあると想定されたため、これまでの計画した3地域以外に2地域を増やしたことに対応する。
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