本研究では、特定悪臭物質を中心とした有害有機物質について、分解能を有すると期待される微生物産生の酵素群十数種類の活性化の有無を測定し、各有害有機物質の分解に有用な酵素群の同定を行った。具体的には、有害有機物質をその有機化学的構造特性から、有機溶媒系、硫黄系、アルデヒド系、アミン系、低級脂肪酸系悪臭物質と大きく5種類に分別し、特に土壌環境汚染に関係があると考えられる物質を選定した。また、微生物産生の酵素群の中で、環境浄化に関与すると推定される酵素群の選定を行い、有害有機物質に分解能を示す酵素群の活性化測定を行った。加えて、PCR-DGGE法を用い、土壌環境中に存在する微生物群集の解析を行った。また、研究分担者は、様々な条件下で測定された複数の酵素活性化データを統合して扱うことができるように、データの標準化を行った。開発した手法を、測定された微生物産生酵素群の活性化データへ適用し、測定された酵素間の相互作用を推定した。その結果、培養初期は、添加する有害有機物質の種類および濃度の違いにより、培養土壌中の微生物群集およびそれに起因する産生酵素群が異なっていた。培養後半は、添加した有害有機物質の種類や濃度に関係なく、培養土壌中の栄養源が少なくなり、培養前半に生育していた微生物が死滅し、それらの菌体成分を栄養源とする別の微生物群が出現する様子が明らかとなった。 本研究によって酵素活性化データに対するバイオインフォマティクス的解析手法を確立することは、環境分野の実験データに対する新しいアプローチとして期待される。
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