研究課題
金属ナノ粒子は、医療分野への応用が期待されているが、静脈内に投与したナノ粒子の殆どが肝臓や脾臓などの細網内皮系に捕捉され,標的組織へ送達できないことが課題である。一方,我々は産業糸状菌である麹菌の界面活性蛋白質hydrophobin (-RolA)に関する研究を行ってきた。その後,ヒト感染性糸状菌Aspergillus fumigatusにおいてhydrophobinがヒトの免疫応答回避 (ステルス) 能を有することが示された。そこで我々は,生体内で安定な金属酸化物ナノ粒子に,糸状菌の新規ステルス因子である界面活性蛋白質RolAを被覆し,ステルス機能を賦与した新規ステルスナノ粒子の開発を行った。金属ナノ粒子は高温熱水反応により合成した酸化鉄(Fe3O4)ナノ粒子(平均粒径200 nm)を用いた。麹菌Aspegillus oryzaeで発現した組み換え体RolAを従来確立していたイオン交換樹脂等のカラム法で精製し、さらにポリミキシンビーズでLPSを除去して被覆用RolAを調製した。LPS-freeの精製RolAで酸化鉄ナノ粒子を完全被覆して、RolA被覆粒子を作製した。RolA被覆粒子のステルス能を、まずマウス由来の樹状細胞およびマクロファージを用いて評価した。その結果,樹状細胞からのサイトカイン産生,マクロファージによる貪食を誘起しなかった。次いで、マウスに対してRolA被覆粒子と対照となるRolAを被覆しない粒子を尾部より静脈投与し、MRIによるimaging解析を実施した。その結果、RolA非被覆粒子がマクロファージに捕捉され肝臓と脾臓に集積するのが観察されたのに対して、RolA被覆粒子は肝臓・脾臓に集積せず、網内系マクロファージの貪食を回避し得ることが示された。
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フードケミカル
巻: 1 ページ: 59-63
http://www.agri.tohoku.ac.jp/microbio/index-j.html