研究課題/領域番号 |
24658284
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
西河 淳 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (30218127)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ドラッグ・デリバリー・システム |
研究概要 |
ボツリヌス神経毒素(NTX)は、細胞質内で毒性を発揮するプロテアーゼドメイン(NTXLc)、標的神経細胞表面のレセプターに結合するドメイン、孔形成ドメイン(NTXHc)の三つからなり、プロテアーゼドメインは他のドメインとジスルフィド結合で繋がった二本鎖ポリペプチド構造をしている。レセプターに結合したNTXは、エンドサイトーシスで細胞内に取り込まれた後、孔形成ドメインが構造変化を起こし、エンドソーム膜に孔を形成してプロテアーゼを細胞質内に注入して細胞機能を破壊する。そこで本研究では、この毒素細胞内移行機能を応用して、毒素プロテアーゼの代わりに有用タンパク質を細胞質内に効率よく注入する細胞内へのタンパク質トランスポートシステムの試作を行い、新たなドラッグデリバリーシステムの創製に向けチャレンジするものである。 そこで、まずNTXHc にHisタグを付加したものを大腸菌で大量に発現させ、精製後神経系の培養細胞Nero2Aの培地に添加して、それらが細胞表面に結合しさらに細胞内に侵入することを確認した。現在は、このNTXHcのN末端側にTEVプロテアーゼがS-S結合を介して結合しているタンパク質の発現をデザインしている。 一方、このトランスポートシステムがうまく動作しているかを簡便に検証するための方法として、TEVプロテアーゼ感受性のFRETシステムを神経細胞内に発現させる必要があり、こちらの方は蛍光色素タンパク質の組み合わせを種々検討した結果からGFP2とRFPの組み合わせとすることを決め、それらのcDNAの間にTEVプロテアーゼの基質となる配列を挿入した発現プラスミドを構築した。現在は、二つの蛍光色素間のアミノ酸の種類や数を調整して高いFRET効率が得られるような複合体の作製を検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、有用タンパク質をトランスポートするシステムの試作として、有用タンパク質のモデル物質TEVプロテアーゼを細胞内に注入する側のTEV-NTXHcタンパク質の構造設計と、細胞質内に注入されたTEVプロテアーゼを簡便に感度良く検出するFRETシステムの構築がまず初年度では重要な検討事項となっている。平成24年度はこれらのどちらの検討事項もほぼ当初の計画通りに進行しており、達成度は概して良いと言える状況である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、モデルタンパク質TEVを細胞質内に注入するTEV-NTXHcの設計に於いて、TEVのC末端側にボツリヌス毒素NTXLcの当該部分を適当な長さで挿入した種々のフュージョンタンパク質を大腸菌で発現させて、オリジナルのNTXHcと同様にS-S結合がかかっているものを選び出し、大量に調整する。 また、TEVプロテアーゼの細胞注入量を感度良く検出するFRETシステムの構築に於いては、二つの蛍光色素間のアミノ酸の種類や数を調整して高いFRET効率が得られる複合体を検討し、最適のFRETシステムをパーマネントに発現するNeuro2A細胞株を樹立する。そして、当初の計画通りH25年度中にモデルタンパク質TEVプロテアーゼを培養細胞の細胞質に挿入するシステムの試作の完成を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品費:実験、測定に必要な蛍光顕微鏡、蛍光分光光度計等の設備、細胞培養設備等は整っているため、研究費のほとんどを細胞培養に必要な消耗品や培地、遺伝子操作用の試薬や消耗品に使用する予定である。 旅費:成果を学会で発表するための旅費を計上している。 人件費・謝金:細胞の培養に於いては、常時幾つもの種類の細胞を維持していく必要があるため、細胞培養を手伝ってもらう研究補助者への謝金を支払う予定である。 その他:研究成果の発表のための費用を計上している。
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