研究課題
ボツリヌス神経毒素(NTX)は、複数の無毒のタンパク質と結合した巨大な複合体構造をしており、無毒成分は経口接種されたNTXの体内循環系への移行に重要な役割を果たしている。また、NTXも細胞質内で毒性を発揮するプロテアーゼドメイン(NTXLc)、標的神経細胞表面のレセプターに結合するドメイン、孔形成ドメイン(NTXHc)の三つからなり、NTXLcが他のドメインとS-S結合で繋がった二本鎖ポリペプチド構造をしている。無毒成分により体内循環系に移行したNTXは神経細胞表面のレセプターに結合し、エンドサイトーシスで細胞内に取り込まれた後、孔形成ドメインが構造変化を起こし、エンドソーム膜に孔を形成してプロテアーゼを細胞質内に注入して細胞機能を破壊する。そこで本研究では、この一連の毒素細胞内移行機能を応用して、毒素プロテアーゼの代わりに有用タンパク質を細胞質内に効率よく注入する細胞内へのタンパク質トランスポートシステムの試作を行い、新たなDDSの創製に向けチャレンジするものである。本年度は、昨年度に引き続きこのトランスポートシステムがうまく動作しているかを検証するためのTEVプロテアーゼ感受性FRETシステム構築の検討を行った。具体的には、GFP2とRFPのcDNA間に種々の長さのリンカーとTEVプロテアーゼ切断サイトを組み込んだ融合タンパク質を培養細胞に発現させ、細胞ホモジネートにTEVプロテアーゼを作用させて効率よくFRETが観察される融合タンパク質発現プラスミドを試作検討し、得られた最適融合タンパク質を恒常的に発現する細胞株の樹立を現在試みている。また、NTXを利用したDDSにおいてその改変NTXを体内に移行させるために改変NTXと無毒成分との複合体の形成が一つの重要なポイントであることから、複合体とNTXとの立体構造の解析も行った。その課程で、C型毒素複合体の無毒部分の立体構造を明らかにすることが出来たため、本研究の一つの成果として学会と論文で公表した。
すべて 2014 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)
Acta Crystallographica
巻: F70 ページ: 64-67
10.1107/S2053230X13032378