研究課題/領域番号 |
24658286
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
丸山 伸之 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (90303908)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 細胞内輸送 / 種子 / 受容体 / 液胞 / 高次構造 |
研究概要 |
植物における特徴的な細胞内小器官である液胞は、種子の発芽の際の栄養源となる貯蔵タンパク質の蓄積などの機能をもつ。液胞へ運ばれるタンパク質は、自身のもつ選別輸送シグナルが受容体に認識されることにより選択的に輸送される。申請者は、種子細胞を用いて貯蔵タンパク質の選別輸送シグナルを短時間で解析するアッセイシステムを構築し、そのシステムを用いて一次構造の性質により機能するタイプ(一次構造型シグナル)と高次構造により形成されるタイプの選別輸送シグナル(高次構造型シグナル)をもつ貯蔵タンパク質が存在することを報告した。一次構造型シグナルに対する受容体についてはVacuolar sorting receptor(VSR)という分子が報告されているが、高次構造型シグナルに対する受容体は未解明である。また、酵母や動物細胞では液胞や分解を担うリソソームへの選別輸送に機能している受容体とVSRとの間に1次構造の相同性は見られない。本研究は、VSRの立体構造解析を行うとともに、高次構造型シグナルに対する受容体の同定を行うことにより植物液胞への選別輸送機構を高次構造から解明することを目的としている。本年度は、一次構造型シグナルを認識するVSRの高次構造を解明するために、ドメイン欠失型ダイズVSRを昆虫細胞発現系で調製し、一次構造型シグナルを認識する最少ドメイン(minGmVSR)を確定した。さらに、minGmVSRを大量調製し、その結晶の作成に成功した。また、主要な貯蔵タンパク質を欠損するダイズ系統を利用して高次構造シグナルのみをもつダイズ種子貯蔵タンパク質が液胞へ輸送されることを証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、植物液胞への選別輸送機構を高次構造から解明することを目的としており、1)VSRの立体構造解析、2)高次構造型シグナルに対する受容体の同定、の2項目について行う予定にしている。平成24年度において、一つ目の項目について、VSRの選別輸送シグナルを認識する最少ドメインの結晶化に成功した。また、2つ目の項目についても高次構造型シグナルのみをもつ貯蔵タンパク質を発現するダイズ系統を実験材料として確立した。これらの成果より、平成25年度において順調に研究が進行すれば当初予定していた研究目標を達成できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、植物液胞への選別輸送機構を高次構造から解明することを目的としており、1)VSRの立体構造解析、2)高次構造型シグナルに対する受容体の同定、の2項目について行う。1つ目の項目については、迅速に構造決定するためにセレノメチオニンに置換した発現系の構築が必要であるため、セレノメチオニンを含有する培地で昆虫細胞を培養し、minGmVSRを発現させる。精製後、順次結晶化を行うとともに放射光施設でのデーター測定および構造解析へとすすめる。2つ目の項目については高次構造型シグナルのみをもつ貯蔵タンパク質を大量に発現するダイズ系統を大量に栽培し、登熟期の種子を分画後、アフィニティーにより受容体を精製および同定を行う。年度の前半にタンパク質の精製、結晶化などの実験補助のために技術補佐員を雇用する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
1) 物品費 1,470,186円 (タンパク質精製用の試薬類、タンパク質同定のための分析費用、結晶構造解析のための試薬類) 2) 人件費 技術補佐員雇用費 1,000,000円 3) 旅費 学会発表旅費 100,000円
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