研究課題/領域番号 |
24658287
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
増田 太郎 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (40395653)
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研究分担者 |
三上 文三 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (40135611)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | フェリチン / 金属 / メタロプロテイン |
研究概要 |
蛋白質と金属原子の相互作用に関する理解を深めるため、種々の金属含有蛋白質に関するX線結晶構造解析を行った。まず、海産多細胞緑藻であるアナアオサにおいて、鉄貯蔵タンパク質フェリチンの遺伝子を見出し、その蛋白質発現系を構築した。組換え型アナアオサフェリチン蛋白質のX線結晶構造解析により、その詳細な立体構造を明らかにした。アナアオサフェリチンの活性部位には鉄原子の配位が見られ、近傍のヒスチジン、チロシン、グルタミン、グルタミン酸残基のアミノ酸側鎖が鉄の配位子となっていた。 また、アナアオサフェリチンは陸上高等植物型フェリチンと類似の構造を有することも明らかとなった。すなわち、N-末端に位置する植物型フェリチン特有のドメインが、多量体構造の安定化に寄与しており、このドメインが生体内で分解を受けることにより、フェリチン蛋白質の分解と内部に貯蔵された鉄原子の必要個所への供給が開始される可能性が示された。 鉄以外の金属原子を補因子とする金属蛋白質について、カルシウムを分子表面に結合するザクロ由来のキチナーゼ、銅を活性中心に有する甲殻類由来フェノールオキシダーゼのX線結晶構造解析を行った。到達分解能は、各々1.5Åと1.7Åであった。前者はカルシウムに対する親和性が弱く、構造モデル中のカルシウムイオンの占有率は低いものとなった。後者は、6残基からなるヒスチジン側鎖と2原子の銅が安定した活性中心を形成していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた、藻類由来のフェリチンと、カルシウム集積能をもつ果樹由来のキチナーゼのX線結晶構造解析に成功したため。 前者は、投稿論文としたため、次年度以降は後者の研究に注力する。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、金属結合蛋白質に関する詳細な立体構造解析を行い、蛋白質分子と金属リガンドとの相互作用に関する機作を明らかにする。また、前年度までに明らかにした、鉄貯蔵タンパク質フェリチンの立体構造を基に、これまでに得られた知見を活かし、新規金属集積分子の設計を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に、元素分析装置(グラファイトファーネス型原子吸光分光光度計)を設置し、元素分析に関するインフラが整った。したがって、平成25年度は、大型機器の購入は必要とせず、元素分析用ランプ、グラファイトファーネス、および一般的な生化学用試薬などの購入が主となる。 また、蛋白質のX線結晶構造解析に関するデータ収集は、引き続き兵庫県佐用町にあるSPring8の放射光施設を利用するため、当地への旅費を使用したい。また、研究成果発表のため、鳥取市で開催される日本蛋白質科学会年会への旅費も計上する。
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