キノヘムプロテイン・アミン脱水素酵素(QHNDH)オペロンにコードされたORF2 タンパク質は、QHNDHのγサブユニットにおいて酸性残基とCys 残基の間に分子内チオエーテル架橋を形成し、5-8 残基をループアウトした多環状構造を作り出す。このORF2 タンパク質の機能解明と環状ペプチドライブラリーの構築を行うため、嫌気条件下において、同タンパク質を精製し、鉄硫黄クラスターを再構成することによって活性フォームを得ることに成功した。試験管内において、精製ORF2タンパク質を用いて、短縮型および全長γサブユニットにチオエーテル架橋を形成させ、その活性を質量分析によって検出する方法を開発した。最終年度においては、構造情報を得るために、ホモロジーモデルを構築し、ラジカルによる反応機構および連続的な架橋形成に関して、重要な情報を得た。研究成果は新しいラジカルSAM酵素の反応形態を解明しており、J. Biol. Chem. 誌に投稿論文が掲載されるなど国内外で高く評価されている。また、環状ペプチドライブラリーの構築に用いる上で、発現量と反応性において優れたORF2およびγサブユニットのクローンを得るため、これまでの2種に加え、さらに2種類の細菌種に由来するORF2およびγサブユニットの発現系を構築し、前述の試験管内アッセイ法によって、その活性を評価した。また、最終年度にかけてPCRを利用したランダム化ライブライリーの効率的な構築の方法論を確立することができた。鉄硫黄クラスターの再構成を行えば、十分な架橋活性をもつORF2タンパク質を得られるので、試験管内におけるプロテアーゼ阻害活性を有する環状ペプチドの試験的なスクリーニングを行うことが可能となった。架橋ランダム化ペプチドライブラリーは、様々な機能性を付与できる可能性があり、ペプチドのコンビナトリアルケミストリーを進展させる重要な成果といえる。
|