研究課題/領域番号 |
24659004
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大石 真也 京都大学, 薬学研究科(研究院), 講師 (80381739)
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キーワード | ペプチド / 二次代謝産物 / 天然物 / 全合成 / 薬らしさ |
研究概要 |
本研究は、微生物の二次代謝産物由来の各種生理活性ペプチドの効率的合成法を確立するとともに、抗腫瘍活性ペプチドの構造活性相関研究を通して生物活性や生体膜透過性に求められるペプチドの性質を理解することを目的としている。平成25年度は、抗腫瘍活性ペプチドcoibamide Aの立体配置の確定に向けた合成法の改良とN-メチル化反応に適用可能なアミド保護基の検討を行った。 平成24年度までの検討により顕在化したcoibamide Aの合成プロセスにおける課題を解決すべく、ペプチドの環状部分における環化による骨格構築を行う新たなプロセスを立案し検討を行った。あらかじめ3つのユニットを固相法により調製後、各ユニットを固相樹脂上で組み上げることで主鎖骨格の構築が可能となった一方で、縮合時のエピ化が複数個所で認められることが示唆された。また、環状部分を構築するプロセスの収率が満足のいくものでないことから、今後縮合条件の精査が必要である。 ペプチド結合のN-メチル化反応に適用可能な保護基の精査を進め、ペプチドの固相合成において利用されるSerやThrの保護体を活用できることを明らかにした。また、抗腫瘍活性を有するIB-01212の合成に本アプローチを適用し、IB-01212の合成上の課題の検証を行うとともに配列を変換した各種誘導体を作成し構造活性相関研究を実施した。IB-01212のいくつかの誘導体はIB-01212とほぼ同等の生物活性を示し、ペプチドの配列が生物活性と直接関連しないことを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度の研究では、coibamide Aの分子骨格を構築する新たなアプローチを確立した。また、ペプチド結合のN-メチル化反応時に利用可能な保護基として、SerおよびThrのオキサゾリン保護誘導体が利用可能であることを明らかにし、IB-01212の合成に応用した。さらに、得られたIB-01212の誘導体の生物活性評価を行い、ペプチド性二次代謝産物のN-メチル基の重要性に関する知見と創薬展開の指針を得ることができた。 全体を通して、3年計画の2年目までに予定していた計画通りの進捗が達成できたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、ペプチド結合のN-メチル化反応時に利用可能な保護基を検討し、ペプチド性二次代謝産物の化学合成に有用なアプローチの確立に向けた検討を行う。平成25年度までに検討した修飾基以外に複数の前駆体や誘導体にも検討範囲を拡げ、目的物の有効な精製法と組み合わせた効率的な合成プロセスを確立する。また、新たなペプチド性天然有機化合物の合成にも取り組み、エピマーを含む各誘導体のNMR解析と生物活性評価による化学構造の決定を行う。
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